年齢別ガイド

思春期の女の子の栄養 — 月経・骨密度・鉄分を支える食事

「最近すぐ疲れたって言う」「朝ごはんを食べずに家を出る」「急に体型を気にしはじめた」——小学校高学年から中学生にかけて、娘さんの変化に戸惑うことはありませんか。思春期の女の子の体の中では、身長が伸び、骨が太くなり、血液が増え、やがて月経が始まるという大仕事が同時に進んでいます。その材料になるのは、毎日の食事とおやつです。この記事では、とくに大切な鉄・カルシウム・ビタミンDを中心に、減らすのではなく「足し算」の発想で栄養を届ける工夫をまとめました。

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思春期の女の子の体で起きていること

女の子の思春期は、早い子では8〜9歳ごろから始まります。胸のふくらみ、身長がぐんと伸びる「成長スパート」、丸みのある体つきへの変化を経て、初経(はじめての月経)を迎えます。日本では初経は12歳前後が平均とされますが、小学4年生で迎える子もいれば中学生になってからの子もいて、個人差がとても大きいのが特徴です。

この数年間は、乳児期に次いで体が大きく変わる時期。必要なエネルギーも栄養素も一気に増えます。日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、12〜14歳の女子は、同じくらい体を動かす大人の女性より多くのエネルギーが必要とされています(Das et al., 2017)。

時期ごとに意識したい栄養(目安)

時期体の変化意識したい栄養
はじまり(9〜11歳ごろ)胸のふくらみ、身長の伸びが加速、体脂肪が増えはじめるカルシウム、ビタミンD、成長に見合ったエネルギー
まっただ中(11〜13歳ごろ)身長の伸びがピーク、骨がどんどん育つカルシウム、たんぱく質、増えはじめる鉄
仕上げ(13〜16歳ごろ)初経を迎え、身長の伸びはゆるやかに鉄(月経による損失分)、カルシウム、葉酸、魚の脂

年齢はあくまで目安です。学年ではなく、その子の体の変化に合わせて考えましょう。

鉄 — 月経が始まったら「足りているかな」を気にかける

思春期の女の子にとって、鉄は不足しやすい栄養素の筆頭です。成長で血液の量が増えるうえに、月経が始まると毎月鉄が失われます。世界保健機関(WHO)も、思春期の女子の鉄不足を栄養面の重要課題に挙げています(World Health Organization, 2018)。

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、10歳以上の女性の鉄の推奨量が「月経なし」と「月経あり」に分けて示されていて、月経ありのほうが高く設定されています。具体的な数値は年齢区分ごとに異なるため、厚生労働省の公表資料で確認してください。毎日数字を計算するより、「毎食どこかに鉄の多い食材が入っているか」を見るほうが続けやすいはずです。

「思春期だから」で見過ごしやすいサイン

  • しっかり寝ても疲れがとれない、部活でバテやすくなった
  • 授業に集中しにくい、ぼんやりすることが増えた
  • まわりが平気なのに寒がる
  • まぶたの裏や爪の色が白っぽい
  • 頭痛や、立ち上がったときのふらつきが増えた
  • 氷をガリガリかじりたくなる

「反抗期だから」「夜ふかしのせい」と片づけてしまいがちなサインばかりです。鉄と集中力の関係は子どもの鉄不足と集中力の関係でもくわしく紹介しています。

鉄をとりやすい身近な食材

食材鉄のタイプ食事・おやつでの使い方
牛もも肉(赤身)ヘム鉄(吸収されやすい)牛丼、焼き肉のお弁当。脂身の少ない部位を
あさり・しじみヘム鉄+非ヘム鉄味噌汁、あさりの水煮缶で炊き込みご飯
かつお・まぐろの赤身ヘム鉄手巻き寿司、ツナ缶おにぎり
小松菜非ヘム鉄おひたし、スムージー。カルシウムもとれる
納豆・厚揚げ・高野豆腐非ヘム鉄朝ごはんの納豆、高野豆腐の煮物
きな粉非ヘム鉄ヨーグルトや牛乳にひとさじ

「ひじき=鉄」は少し古い情報です

給食や家庭の定番、ひじきの煮物。かつては鉄の代表選手でしたが、2015年の日本食品標準成分表の改訂で、ステンレス釜で加工された干しひじきの鉄の値は、鉄釜で加工されたものよりずっと低く示されるようになりました。今流通している多くはステンレス釜製です。ひじき煮は食物繊維やカルシウムもとれる良い副菜ですが、鉄はひじき一本に頼らず、肉・魚・大豆製品・青菜を組み合わせるのが現実的です。

吸収を助ける「組み合わせ」

植物性の食品に多い非ヘム鉄は、ビタミンCや肉・魚と一緒にとると吸収されやすくなります。小松菜のおひたしの横にみかん、納豆ご飯にブロッコリーの味噌汁、きな粉ヨーグルトにいちごやキウイ——いつもの献立に一品足すだけで十分です。一方、緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を下げるので、食事中の飲み物は麦茶や水がおすすめ。食べ合わせのコツは銅と鉄の吸収を高める食べ合わせも参考になります。

カルシウムとビタミンD — 一生ものの「骨の貯金」

骨の量は思春期に急速に増え、20歳前後でほぼ最大になります。大人になってからの骨の強さは、この時期にどれだけ「貯金」できたかに大きく左右されます(Weaver et al., 2016; Abrams, 2003)。骨粗しょう症は高齢者の病気というイメージがありますが、その土台は10代の食事と運動でつくられているのです。

日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、12〜14歳はカルシウムの推奨量が一生のうちでもっとも高い年代のひとつ。一方で、日本の子どもはカルシウムが不足しがちな栄養素として知られています。

1日の中に、少しずつ散らばらせる

  • 朝ごはん:牛乳をコップ1杯(200ml)で、カルシウムは約220mg。牛乳が苦手ならヨーグルトやチーズでも
  • 給食:小中学校の給食では、ほぼ毎日牛乳が出ます。給食は子どものカルシウム源として大きな存在です
  • おやつ:小魚アーモンド、プロセスチーズ、プレーンヨーグルト、ごまをまぶしたおにぎり
  • 夕ごはん:小松菜や青梗菜の炒め物、厚揚げや木綿豆腐、しらす干し

見落としがちなのが、給食のない土日や夏休み・冬休み。給食の牛乳1本分がまるごと抜けるので、休みの日は朝やおやつで意識して補いましょう。おやつのアイデアは成長期の子どもにカルシウムを届けるおやつガイドにまとめています。

ビタミンDは「食べる」と「浴びる」の両方で

ビタミンDは、腸でのカルシウムの吸収を助ける相棒です。鮭、さんま、いわしなどの魚、しらす干し、卵黄、きくらげや干ししいたけに多く含まれます。また、皮膚に日光が当たることでも体内でつくられます。塾や室内で過ごす時間が長い中学生は、通学や部活、休日の外遊びの時間も大切に。外で過ごす時間とおやつの組み合わせは外遊び×ビタミンDのきほんで紹介しています。

月経と食事 — 周期に合わせて「ちょっと足す」

初経のあと、周期が安定するまでには数年かかるのがふつうです。最初のうちは間隔がばらばらでも珍しくありません。月経の前後は食欲や気分、体のだるさが変わりやすい時期。体の声に合わせて、食事を少しだけ調整してみましょう。

周期ごとの食事のヒント

時期起きやすいこと意識したいこと取り入れやすい食べ物
月経中出血で鉄が失われる、だるさ・冷え鉄+ビタミンC、温かい料理具だくさん味噌汁、あさりの汁物、牛肉と野菜の炒め物
月経後〜排卵ごろ体が軽く、活動しやすい主食・主菜・副菜のバランスいつもの定食スタイル、魚料理
月経前甘いものが欲しくなる、むくみ、イライラ食事を抜かない、塩分を控えめにおにぎり、さつまいも、バナナ、ヨーグルト

月経痛やPMSと栄養

思春期の女子を対象にした研究では、オメガ3脂肪酸(魚に多いDHA・EPAなど)の補給が月経痛の軽さと関連していたと報告されています(Harel et al., 2004)。ただしこれはサプリメントを使った研究なので、まずは鮭やさば、いわしなどの魚料理を週に何回か取り入れるところから始めるのが現実的です。魚が苦手な子向けのアイデアはオメガ3脂肪酸が摂れる子どものおやつガイドへ。

月経前に甘いものが欲しくなるのは、よくあること。「食べちゃダメ」ではなく、おにぎりやさつまいも、ナッツ入りのヨーグルトなど、腹持ちのよいものから選べるように用意しておくと、気持ちも落ち着きやすくなります。

なお、痛みで学校を休む、市販の鎮痛薬が効かないといった場合は、食事の工夫だけで乗り切ろうとせず、婦人科や小児科に相談してください。月経困難症は医療機関で相談できる症状です。

体が温まる和のメニュー

月経中に「温かいものが食べたい」と感じる子は多いもの。豚汁や具だくさんの味噌汁、肉じゃが、小松菜のごま和え、しょうがを入れたスープなど、日本の家庭料理には鉄やたんぱく質をとりながら体を温められるメニューがたくさんあります。特別なものを用意しなくても、いつもの献立で十分に応援できます。

縁の下の栄養素 — 葉酸・亜鉛・ビタミンB12

鉄やカルシウムほど話題にはなりませんが、成長を裏で支える栄養素もあります。

葉酸

新しい細胞をつくるときに欠かせないビタミンです。ほうれん草や小松菜、ブロッコリー、枝豆、いちごなどに多く含まれます。将来の妊娠に備えて大切な栄養素としても知られていて、10代のうちから青菜や豆を食べる習慣をつけておくことは、長い目で見ても役立ちます。

亜鉛

成長、免疫、肌の新陳代謝にかかわるミネラルです。牛肉、かき(牡蠣)、卵、納豆、かぼちゃの種などに含まれます。ニキビが気になりはじめる年頃なので、偏った食事が続いていないか見ておきたい栄養素です。

ビタミンB12

赤血球づくりや神経の働きにかかわり、ほぼ動物性食品(肉・魚・卵・乳製品・貝類)にしか含まれません。肉や魚を避けたがる子は、卵や乳製品、のりなどを取り入れられているか気にかけましょう。

体の変化をどう受け止めるか

思春期の女の子の体に脂肪がつき、丸みを帯びてくるのは、自然で必要な変化です。体脂肪はホルモンの働きや月経、骨づくりにかかわっていて、「順調に育っている」しるしでもあります。

日本では、思春期の女子のやせ志向が以前から課題として指摘されています。自己流で食事を減らしたり、主食を抜いたりすると、次のようなことが起こりやすくなります。

  • 月経が来ない、止まる:エネルギー不足のサインで、医療機関での相談が必要です
  • 骨の貯金ができない:骨量が増えるはずの時期を逃してしまいます
  • 疲れやすさ・集中しにくさ:勉強や部活にも影響します
  • 摂食障害のきっかけ:思春期の極端な食事の偏りは、摂食障害のリスク要因のひとつです

声のかけ方のヒント

体重や見た目ではなく、体が「できること」に目を向けた言葉を選びましょう。「最近、部活で長く走れるようになったね」「ちゃんと食べてるから、元気に動けてるんだね」。家族が誰かの体型をからかったり、大人自身が食事を極端に減らしたりしないことも、子どもにとっては大切なメッセージです。くわしくは子供のボディイメージと食事もあわせてどうぞ。

毎日のおやつに取り入れるアイデア

思春期の栄養は、特別なメニューを作らなくても、おやつの選び方で大きく変わります。学校から帰ってきた空腹のタイミングは、足りない栄養を届けるチャンスです。

鉄をとるおやつ

  • きな粉をかけたプレーンヨーグルト+いちごやキウイ(鉄+ビタミンC)
  • ツナや鮭のおにぎり+みかん
  • かぼちゃの種入りのミックスナッツ(亜鉛やマグネシウムも一緒に)
  • 高カカオチョコレートをひとかけ+果物(カフェインを含むので夕方以降は控えめに)

カルシウムをとるおやつ

  • 小魚アーモンド
  • プロセスチーズ+全粒粉クラッカー
  • ヨーグルトにバナナとグラノーラ少量
  • しらすとごまのおにぎり

部活・塾の日の補食

部活のある日や塾の前は、おにぎり、牛乳、バナナ、ゆで卵などの「軽食」に近いおやつがおすすめです。コンビニで自分で選ぶ機会が増える年頃なので、選び方のコツを一緒に話しておくと安心です。ティーンエイジャーのおやつ選びガイドも参考にしてください。

レシピ:小松菜とキウイのグリーンスムージー

  • 小松菜 1株(約40g)
  • キウイ 1個(またはいちご 5粒)
  • 冷凍バナナ 1/2本
  • きな粉 大さじ1
  • 牛乳 150ml

小松菜はざく切りにして、すべてをミキサーにかけるだけ。小松菜とキウイで鉄とビタミンCを一緒にとれ、牛乳ときな粉でカルシウムとたんぱく質もプラスできます。バナナとキウイの甘みで、青菜の味はほとんど気になりません。

こんなときは医療機関へ

多くの場合、思春期の栄養は日々の食事の工夫で支えられます。ただし、次のようなときは小児科や婦人科に相談しましょう。

  • 15歳を過ぎても初経がない
  • それまであった月経が3か月以上止まっている
  • 月経の量がとても多い(夜用ナプキンでも1〜2時間でもれる、レバーのような塊が多い など)
  • 十分に寝て食べていても、疲れやめまいが続く
  • 食事量を極端に減らす、食べたことを隠す、体重へのこだわりが強い
  • 短期間で体重が大きく増えた・減った

貧血が心配なときは、血液検査でヘモグロビンや貯蔵鉄(フェリチン)の状態を調べてもらえます。鉄のサプリメントは、自己判断で長く続けると過剰になることもあるので、使う場合は医師に相談してからにしましょう。

よくある質問

思春期の女の子は、鉄をどのくらいとればいいですか?

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、10歳以上の女性の鉄の推奨量は「月経なし」と「月経あり」に分けて示されていて、月経ありのほうが高く設定されています。具体的な数値は年齢区分ごとに異なるので、厚生労働省の公表資料で確認してください。毎日の献立では、肉・魚・大豆製品・青菜のどれかを毎食取り入れ、果物や野菜のビタミンCと組み合わせるのが続けやすい方法です。疲れやすさやめまいが続くときは、自己判断でサプリメントを使わず、医療機関で血液検査を受けましょう。

カルシウムは何歳ごろから意識すればいいですか?

思春期に入る前後から、ずっと意識しておきたい栄養素です。骨の量は思春期に急速に増え、20歳前後でほぼ最大になるため、この時期の食事が将来の骨の強さの土台になります。日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、12〜14歳はカルシウムの推奨量が一生のうちでもっとも高い年代のひとつです。給食の牛乳に加えて、朝ごはんやおやつで乳製品・小魚・大豆製品・青菜を取り入れ、給食のない休日は特に意識しましょう。

思春期に体重が増えるのは普通ですか?

はい、自然なことです。思春期には身長が伸び、骨や筋肉が育ち、体脂肪も増えて丸みのある体つきになります。体脂肪はホルモンの働きや月経、骨づくりに必要なものです。体重の数字だけで判断せず、学校の健康診断の身長・体重を成長曲線に書き込んで、その子なりのカーブに沿って育っているかを見るのがおすすめです。急な増減や、本人が体重を強く気にして食事を減らしている様子があれば、かかりつけの小児科に相談しましょう。

月経痛やPMSは、食事で軽くなりますか?

食事だけで症状をなくすことは期待しすぎないほうがよいですが、支えになる工夫はあります。思春期の女子を対象にした研究では、オメガ3脂肪酸の補給と月経痛の軽さの関連が報告されています。まずは魚料理を週に何回か取り入れる、月経中は鉄とビタミンCを意識した温かい料理を選ぶ、月経前は食事を抜かずに腹持ちのよいおやつを用意する、といったところから始めてみてください。痛みで学校を休むほどつらいときは、婦人科や小児科に相談しましょう。

娘が肉を食べたがりません。栄養は足りますか?

肉が苦手でも、魚・卵・乳製品・大豆製品をしっかり取り入れれば、必要な栄養をそろえることは十分にできます。とくに気をつけたいのは鉄、ビタミンB12、亜鉛、カルシウムです。納豆や厚揚げ、小松菜などの鉄はビタミンCと組み合わせて、卵や乳製品、魚介類でビタミンB12を補いましょう。肉も魚も卵も避ける完全な菜食を希望している場合は、成長期に不足が出やすいので、管理栄養士や医師に相談しながら進めると安心です。

参考文献

タイプ別アドバイス

🏃 アクティブ派

部活で走る量が多い子は、月経が始まると鉄が不足しやすくなります。練習後の補食は「おにぎり+牛乳」や「ツナおにぎり+みかん」のように、エネルギー・たんぱく質・鉄・ビタミンCをまとめてとれる組み合わせに。疲れやすさが続くときは、根性論ではなく栄養と休養を見直すサインと考えましょう。

🎨 クリエイティブ派

スムージーやヨーグルトボウルの「自分レシピ」づくりを任せてみましょう。小松菜・キウイ・きな粉など、鉄やカルシウムの多い材料をトッピングに用意しておけば、色の組み合わせを楽しみながら自然に栄養がそろいます。月経の記録アプリに、体調と食べたものを一緒にメモする習慣も、自分の体を知る手がかりになります。

😌 リラックス派

体の変化や月経の話は、食卓で改まって切り出すより、一緒におやつを食べながらの雑談のほうが話しやすいものです。給食のない休日の朝に「牛乳かヨーグルト、どっちにする?」と選んでもらうだけでも十分。完璧な献立より、毎日の小さな「足し算」を続けることを大切にしてください。

この記事は2026年10月時点の情報に基づいています。個別の食事アドバイスについてはかかりつけの小児科医にご相談ください。

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