マグネシウムは体の中で何をしているの?
マグネシウムは、骨や歯、筋肉、神経などに広く存在するミネラルで、体の中の300種類以上の酵素のはたらきに関わっているといわれます(Schwalfenberg & Genuis, 2017)。食べたものをエネルギーに変える、筋肉を動かしたりゆるめたりする、神経の信号を伝える——どれも子どもが元気に遊び、学び、眠るために欠かせないしくみです。
神経の「ブレーキ役」を支える
脳の中には、興奮を伝える神経とブレーキをかける神経があります。ブレーキ側の代表がGABA(ギャバ)という神経伝達物質で、マグネシウムはこのGABAのはたらきや、興奮系の受容体の調整に関わっていると考えられています。また、ストレスを受けたときに働くホルモンの調整にも関わることが知られています。
ただし「マグネシウムをとれば落ち着く」という単純な話ではありません。子どもの気持ちの切り替えには、睡眠、生活リズム、遊びの量、家庭や学校の環境など多くのことが関わります。マグネシウムは、その土台を支える栄養素のひとつ、と考えるのがちょうどよい距離感です。
眠りとのつながり
マグネシウムは、体を休めるモードにする副交感神経のはたらきや、筋肉のゆるみに関わっています。イランで行われた試験では、不眠のある高齢者がマグネシウムを8週間とったところ、睡眠の質に関する指標によい変化がみられたと報告されています(Abbasi et al., 2012)。ただしこれは高齢者を対象にした研究で、子どもに同じことが当てはまるかはわかっていません。
集中や学びとの関係
マグネシウムは、脳がエネルギーをつくるしくみや、神経どうしのつながりの調整にも関わっています。子どもの注意や集中との関係を調べた研究もありますが、規模が小さいものが多く、はっきりした結論は出ていません。
なぜ不足しやすいの? 日本の食卓から考える
マグネシウムは、海外でも日本でも「推奨量に届きにくい栄養素」のひとつとされています。アメリカでは、食事からのマグネシウムが足りていない人が多いことが指摘されてきました(Rosanoff et al., 2012)。日本でも、白いごはんやパン、麺が中心で、豆・海藻・種実類が少ない食事だと不足しやすくなります。
精製された主食が中心になりがち
マグネシウムは穀物の胚芽や外皮の部分に多く、精製するとぐっと減ります。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年によると、ごはん100gあたりのマグネシウムは、精白米で約7mg、玄米で約49mg。茶碗1杯(150g)に換算すると、白米で約10mg、玄米なら約70mgと、同じ1杯でも大きな差になります。
おやつが「甘いもの+スナック菓子」に偏る
市販のスナック菓子や菓子パン、甘いジュースは、手軽な反面マグネシウムはわずかです。おやつの時間を「補食」として考え、小魚やナッツ、きな粉、枝豆などを少しずつ組み込むと、1日の合計がぐっと変わります。
どれくらい必要?
子どもに必要なマグネシウムの量は、年齢や性別によって細かく決められています。くわしい数値は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で確認できます。おおまかには、成長とともに必要量が増え、中学生・高校生では大人に近い量が必要になります。毎日の食事でいろいろな食品から少しずつとることが基本です。
和食はマグネシウムの宝庫
うれしいことに、日本の家庭料理には、マグネシウムの多い食材が「特別な健康食品」ではなく、ふだんのおかずとして自然に入っています。
大豆と大豆製品
豆腐、納豆、油揚げ、きな粉、枝豆。大豆はマグネシウムの頼れる供給源です。納豆なら1パック(約40g)で約40mg。豆腐はにがり(塩化マグネシウム)で固めるものが多く、みそ汁や湯豆腐、冷ややっこで毎日のように登場します。きな粉は大さじ2(約12g)で約30mgと、少量でもしっかりとれるのが魅力です。
海藻
わかめ、ひじき、あおさ、のりなどの海藻もマグネシウムが多い食材です。みそ汁のわかめ、おにぎりののり、ふりかけのあおさのように、少量ずつでも毎日続くのが和食の強み。なお、昆布やひじきはヨウ素やヒ素の観点から食べすぎに注意したい食材でもあるので、いろいろな海藻を少しずつ、を意識しましょう。
ごま・小魚
いりごまは小さじ1(約3g)で約10mg。ごはんやあえものにひとふりするだけで足せます。しらす干しや煮干し、ちりめんじゃこなどの小魚も、カルシウムと一緒にマグネシウムをとれる食材です。
玄米・雑穀
白米に雑穀や押し麦を混ぜたり、ときどき玄米ごはんにしたりするのも手軽な工夫です。いきなり全部を切り替えなくても、白米に1〜2割混ぜるところから始めれば、子どもも食べやすいはずです。
マグネシウムがとれるおやつ・補食リスト
おやつの時間に取り入れやすいものを集めました。数値は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年をもとにした概算で、商品や調理法によって変わります。
| おやつ・補食 | 量の目安 | マグネシウム(約) |
|---|---|---|
| 納豆ごはん(小) | 納豆1パック40g | 40mg(納豆分) |
| 枝豆(ゆで) | さやを除いて50g | 35mg |
| きな粉ヨーグルト | きな粉大さじ2(12g) | 30mg(きな粉分) |
| 素焼きアーモンド※ | 10g(8〜10粒) | 30mg |
| かぼちゃの種(いり)※ | 10g | 50mg |
| バナナ | 1本(可食部100g) | 30mg |
| 玄米おにぎり | ごはん100g | 50mg |
| ごまあえ・ごまおにぎり | いりごま小さじ1(3g) | 10mg |
※ナッツや豆など硬くてかみ砕く必要のある食品は、消費者庁が5歳以下の子どもには食べさせないよう呼びかけています。小さい子には、すりごまやきな粉、ナッツペーストなど形を変えて使いましょう。
マグネシウムとADHDの研究、どう受け止める?
「ADHD(注意欠如・多動症)とマグネシウム」は、海外で関心が高いテーマです。ここは期待しすぎず、正確に知っておきたいところです。
わかっていること
ADHDのある子どもは、そうでない子どもに比べて血液中のマグネシウム濃度が低い傾向があった、という観察研究がいくつかあります。また、イランのADHDの子どもを対象にした試験では、ビタミンDとマグネシウムを8週間とったグループで、行動や情緒面の質問票のスコアがプラセボ群よりよい結果だったと報告されています(Hemamy et al., 2021)。
注意しておきたいこと
- マグネシウムはADHDの治療法ではありません。診断や治療は医療機関で相談するものです。
- 「マグネシウムが低い」と「ADHD」が一緒にみられても、どちらが原因かはわかりません。食事内容など別の要因が両方に関わっている可能性もあります。
- 研究はどれも規模が小さく、結果もそろっていません。
- サプリメントで補うかどうかは、必ず主治医と相談してください。
- 一方で、ふだんの食事でマグネシウムをしっかりとることは、どの子にとっても無理のない取り組みです。
ADHD傾向のある子のおやつ選び全般については、ADHD傾向のある子の集中力をサポートするおやつ選びも参考にしてください。
今日からできる、マグネシウムを増やす工夫
寝る前の「おやすみおやつ」
夕食が早く、寝る前にお腹がすいてしまう子には、寝る1時間ほど前に少量の補食を。きな粉をかけたヨーグルト、バナナ半分、ホットミルクに純ココアを少し溶かしたもの(砂糖は控えめに)などがおすすめです。メニューを決めて毎晩同じ流れにすると、「これを食べたら歯みがきして布団へ」という切り替えの合図にもなります。寝る前の食べ物と眠りについてはメラトニンと睡眠おやつでもくわしく紹介しています。
「ひとふり」習慣
すりごま、きな粉、あおさ、刻んだのり。食卓に小さな容器を置いておき、ごはんやヨーグルト、みそ汁にひとふりするだけでも積み重なります。子どもに「今日はどれをかける?」と選んでもらうと、楽しみながら続けられます。
和食の「少しずつ、いろいろ」
朝は豆腐とわかめのみそ汁、昼はのりを巻いたおにぎりと枝豆、夜は魚と野菜、おやつにきな粉もち。ひとつの「スーパーフード」に頼るのではなく、いろいろな食材から少しずつとるのが和食の知恵です。
主食をちょっとだけ変える
白米に雑穀や押し麦を混ぜる、食パンを全粒粉入りにする、うどんの日にはそばを選んでみる。料理の手間はほとんど変わらず、買い物の選び方だけでできる工夫です。
サプリメントはどう考える?
結論からいうと、ほとんどの子どもは食事から十分なマグネシウムをとることを目指せば大丈夫です。Smart Treatsでは、子どもへのサプリメントを自己判断ですすめることはしていません。
医師に相談したほうがよいケース
- 血液検査などで不足を指摘された
- 持病や服用中の薬があり、マグネシウムの必要量や排せつに影響する可能性がある
- 偏食が強く、食事だけでの調整が難しい状態が続いている
- 便秘や睡眠の悩みが長く続いている
「グリシン酸マグネシウム」とは
グリシン酸マグネシウムは、マグネシウムをアミノ酸のグリシンと結びつけた形のもので、海外ではおなかにやさしいサプリメントとして人気があります。ほかにもクエン酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの形があります。日本では、酸化マグネシウムは便秘の治療薬(医薬品)として医師が処方することが多い成分です。「おなかがゆるくなる」という性質があるため、自己判断で子どもに使うのは避けましょう。
海外製のサプリは、1粒あたりの量が子ども向けに設計されていないこともあります。どうしても気になる場合は、小児科医や薬剤師に相談してから決めてください。
とりすぎについて
食品からとるマグネシウムは、腎臓が余分な分を調整して排せつするため、ふつうの食事でとりすぎになることはまずありません。一方、サプリメントなど通常の食品以外からとる場合については、「日本人の食事摂取基準」で子どもにも耐容上限量が設けられています。とりすぎると下痢などの原因になることがあります。
タイプ別アドバイス
汗をたくさんかく練習の日は、ミネラルも一緒に出ていきます。練習後の補食は、納豆巻きやきな粉おにぎり、バナナと牛乳など、エネルギーとマグネシウムを同時にとれる組み合わせに。スポーツドリンクだけで済ませず、「食べる補給」を一品足すのがコツです。
すりごま・きな粉・あおさ・ココアを並べた「ふりかけバー」を作って、ヨーグルトやおにぎりに自分で模様を描いてもらいましょう。どの粉に何が多いかをラベルに書いておくと、遊びながら食材の名前と栄養を覚えられます。
お風呂上がりにホットミルク(純ココア少し)ときな粉ヨーグルトをゆっくり味わう時間を。照明を少し落として、今日あったことを話しながら過ごせば、それ自体が眠りへの切り替えになります。毎晩きっちりでなくても、続けられる日が増えれば十分です。
よくある質問
子どもには1日どれくらいのマグネシウムが必要ですか?
年齢と性別によって異なり、成長とともに必要量が増えていきます。中学生・高校生では大人に近い量が必要です。くわしい数値は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で確認できます。豆腐や納豆、ごま、海藻、玄米などを毎日の食事に少しずつ取り入れることが基本です。
マグネシウムのサプリはADHDの子に役立ちますか?
ADHDのある子どもで血中マグネシウムが低い傾向を示した研究や、ビタミンDとマグネシウムを一緒にとった小規模な試験で質問票のスコアがよくなったという報告はあります。ただしマグネシウムはADHDの治療法ではなく、研究もまだ限られています。サプリを使うかどうかは必ず主治医に相談し、まずは食事からしっかりとることを心がけましょう。
グリシン酸マグネシウムは子どもに使ってもいいですか?
まずは食事からとることをおすすめします。グリシン酸マグネシウムは海外で人気のサプリの形ですが、子ども向けに量が設計されていない製品もあります。日本では酸化マグネシウムが便秘の治療薬として処方される成分でもあり、自己判断での使用は避けてください。気になる場合は小児科医や薬剤師に相談しましょう。
食べ物からマグネシウムをとりすぎることはありますか?
ふつうの食事でとりすぎになることは、まずありません。食品からとったマグネシウムは、腎臓が余分な分を調整して排せつするためです。耐容上限量が設けられているのは、サプリメントなど通常の食品以外からとる場合です。ただし腎臓の病気がある場合は主治医の指示に従ってください。
マグネシウムで子どもの寝つきはよくなりますか?
マグネシウムは体を休めるモードにする神経のはたらきや筋肉のゆるみに関わる栄養素で、高齢者を対象にした試験では睡眠の質の指標によい変化が報告されています。ただし子どもでの研究は限られています。寝る前の軽いおやつとして、きな粉ヨーグルトやバナナを取り入れつつ、就寝時間や照明、画面を見る時間など生活リズムも一緒に整えていきましょう。
小さな子にナッツをあげても大丈夫ですか?
消費者庁は、豆やナッツなど硬くてかみ砕く必要のある食品を5歳以下の子どもには食べさせないよう呼びかけています。小さい子には、すりごま、きな粉、ナッツペーストなど、形を変えて使うと安心です。ナッツはアレルギーにも注意が必要なので、初めて食べるときは少量から試してください。
参考文献
- National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. "Magnesium: Fact Sheet for Health Professionals," 2024.
- Rosanoff, A. et al. (2012). "Suboptimal magnesium status in the United States: are the health consequences underestimated?" Nutrition Reviews, 70(3), 153-164.
- Abbasi, B. et al. (2012). "The effect of magnesium supplementation on primary insomnia in elderly: A double-blind placebo-controlled clinical trial." Journal of Research in Medical Sciences, 17(12), 1161-1169.
- Hemamy, M. et al. (2021). "The effect of vitamin D and magnesium supplementation on the mental health status of attention-deficit hyperactive children: a randomized controlled trial." BMC Pediatrics, 21, 178.
- Eby, G.A. & Eby, K.L. (2006). "Rapid recovery from major depression using magnesium treatment." Medical Hypotheses, 67(2), 362-370. doi:10.1016/j.mehy.2006.01.047
- Schwalfenberg, G.K. & Genuis, S.J. (2017). "The Importance of Magnesium in Clinical Healthcare." Scientifica, 2017, 4179326. doi:10.1155/2017/4179326
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」