栄養素

メラトニンと睡眠おやつ — 寝つきをサポートする食べ物

「もう寝る時間だよ」と電気を消しても、布団の中でごそごそ、目はぱっちり。毎晩の寝かしつけに疲れてしまう日もありますよね。眠りのスイッチを入れているのは、メラトニンという体の中でつくられるホルモンです。そしてその材料と、分泌のリズムをつくるきっかけは、毎日の食事や光の浴び方の中にあります。この記事では、サプリメントに頼るのではなく、いつものおやつの選び方とタイミングで、子どもの自然な眠りを応援する方法をまとめました。

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メラトニンってどんなもの?

メラトニンは、脳の松果体(しょうかたい)でつくられるホルモンで、「そろそろ夜だよ」と体に知らせる役目をしています。朝に光を浴びると体内時計がリセットされ、十数時間後の夜、暗くなってくるとメラトニンの分泌が増えて、自然な眠気がやってきます。

メラトニンは、食べ物からとったトリプトファンというアミノ酸をもとに、次のような流れでつくられます。

トリプトファン(食べ物から)→ セロトニン(主に日中)→ メラトニン(主に夜)

つまり、夜の眠りの準備は朝から始まっているということ。食事に関係するポイントは、次の3つです。

  • 材料のトリプトファン:体の中ではつくれない必須アミノ酸なので、食べ物からとる必要があります
  • 変換を手伝う栄養素:ビタミンB6や鉄、マグネシウムなどが、つくる過程のあちこちで関わっています
  • 炭水化物との組み合わせ:ご飯やパンなどと一緒にとると、トリプトファンが脳に届きやすくなると考えられています

子どもの眠りはとくに「リズム」に左右される

メラトニンの分泌は幼児期に多く、成長とともに少しずつ減っていきます。また思春期に入ると体内時計が後ろにずれやすくなり、夜ふかし・朝寝坊になりがちです。年齢によって眠りの悩みが変わるのはこのためです。

食事と睡眠の関係を整理した総説でも、何をいつ食べるかが眠りの長さや質に影響しうることが示されています(Peuhkuri et al., 2012)。ただし、特定の食べ物を食べればすぐ眠れる、というものではありません。食べ物は眠りを「支える」もので、主役は毎日のリズムづくりです。

日本ではメラトニンは「医薬品」— サプリを使う前に

アメリカなどではメラトニンがサプリメントとして店頭で売られていて、子ども向けのグミもあります。一方、日本ではメラトニンは医薬品の成分として扱われていて、食品やサプリメントとして販売することは認められていません。小児の一部の入眠困難に対しては、医師が診察したうえで処方する医療用医薬品があります。

  • 海外製のメラトニンサプリやグミを、個人輸入や通販で子どもに与えるのはやめましょう
  • 寝つきの悪さが続くときは、自己判断で何かを足すより、まずかかりつけの小児科に相談を
  • この記事で紹介するのは、あくまで食事と生活リズムの工夫です

「薬に頼らずに、まずできること」として、ここからはおやつと生活の工夫を見ていきましょう。

眠りを支える食べ物 — 材料になる栄養をおやつで

トリプトファンを含む身近な食材

トリプトファンは、たんぱく質を含む食品に広く含まれています。牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品、豆腐・納豆・豆乳などの大豆製品、卵、魚、肉、そしてバナナやナッツ類。和食の朝ごはんの定番「ご飯・味噌汁・納豆・焼き魚」は、トリプトファンと炭水化物を一緒にとれる組み合わせです。朝しっかり食べて日中に体を動かすことが、夜の眠りへの準備になります。くわしくはトリプトファン・セロトニンと子どもの食事で紹介しています。

メラトニンそのものを含む食べ物は?

メラトニンは、さくらんぼ、ぶどう、トマト、くるみ、きのこ、穀物など、いろいろな食べ物にもごく少量含まれていることがわかっています(Meng et al., 2017)。ただ、含まれる量は品種や栽培条件で大きく違い、食べたものからどのくらい体に取り込まれ、眠りに影響するかはまだはっきりしていません。

大人を対象にした研究では、酸味の強い品種のさくらんぼ(タルトチェリー)の濃縮ジュースを飲むと、体内のメラトニンが増え、睡眠時間が延びたという報告があります(Howatson et al., 2012; Losso et al., 2018)。とはいえ子どもでの研究は少なく、ジュースは糖分も多くなりがちです。「これを飲めば眠れる」と特定の食品に頼るより、いろいろな食べ物をバランスよく食べることを大切にしましょう。

食材眠りとの関わりおやつでの取り入れ方
牛乳・ヨーグルトトリプトファンとカルシウムホットミルク、ヨーグルト+バナナ
豆乳・きな粉・豆腐トリプトファン、マグネシウムきな粉ミルク、豆腐入りの小さな蒸しパン
バナナトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物そのまま、ヨーグルトにのせて
ご飯炭水化物(トリプトファンの運び役)小さなおにぎり、おかゆ
さつまいも炭水化物、食物繊維ふかしいも、焼きいも
くるみ・ナッツマグネシウム、ごく少量のメラトニン小学生以上なら少量。幼児は刻むかペーストで

寝る前のおやつ、量とタイミングのコツ

夕食が早い家庭や、習い事で夕食が軽めになった日は、寝る前に小腹がすくこともあります。空腹で眠れないなら、少しだけ食べるのは悪いことではありません。ポイントは「寝る直前にたくさん」を避けることです。

  • タイミング:布団に入る1時間前くらいまでに食べ終える
  • 量:子どもの片手にのるくらいの軽いもの。夕食の代わりにはしない
  • 内容:脂っこいもの、甘すぎるもの、カフェインを含むものは避ける

大人を対象にした研究では、食物繊維の多い食事のあとは深い眠りが多く、飽和脂肪酸の多い食事のあとは深い眠りが少なく、糖分の多い食事は夜中の覚醒の多さと関連していました(St-Onge et al., 2016)。子どもにもそのまま当てはまるとは限りませんが、寝る前ほど「軽く、甘さ控えめに」を意識するとよさそうです。

おやすみ前のおやつアイデア

1. ホットミルク
人肌くらいに温めた牛乳は、昔ながらの定番。トリプトファンとカルシウムがとれ、「これを飲んだら寝る」という合図にもなります。甘みをつけるなら少量のはちみつを(1歳未満には絶対に与えないでください)。

2. バナナ+プレーンヨーグルト
バナナの炭水化物とビタミンB6、ヨーグルトのたんぱく質を一度に。バナナをつぶして混ぜれば、小さな子でも食べやすいプリンのような食感になります。

3. きな粉ミルク
温めた牛乳か無調整豆乳に、きな粉小さじ1〜2。香ばしい香りで、甘さ控えめでも満足感があります。

4. 小さなおにぎり
習い事で夕食が軽かった日は、鮭やしらすの小さなおにぎりを。ご飯の炭水化物と魚のたんぱく質で、空腹で目がさえるのを防げます。

5. ふかしいも
さつまいもを蒸して、ひと口サイズに。自然な甘みで、甘いお菓子の代わりになります。

6. 甘酒(米麹)を少し
米麹から作る甘酒はアルコールを含まず、冬の夜にぴったりの温かい飲み物です。糖分は多めなので、お湯や牛乳で割って少量に。アレンジは甘酒ドリンク3種を参考にしてください。

7. チーズ+全粒粉クラッカー
小学生くらいからの、少し大人っぽいおやすみおやつ。噛む回数が増えるので、ゆっくり食べる時間そのものが気持ちを落ち着けてくれます。

眠りをじゃましやすいもの

カフェイン(意外なところにも)

コーヒーだけでなく、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、紅茶、コーラ、エナジードリンク、チョコレートにもカフェインが含まれています。大人を対象にした研究では、寝る6時間前にとったカフェインでも睡眠が乱れたと報告されています(Drake et al., 2013)。体の小さい子どもは影響を受けやすいので、夕方以降の飲み物は麦茶や水、ルイボスティーなどカフェインを含まないものにしましょう。日本茶文化の中でのカフェインとの付き合い方は子どもの発達中の脳とカフェインにまとめています。

甘いお菓子をたくさん

寝る前に甘いお菓子をたくさん食べると、血糖値が大きく上下しやすくなります。夜のおやつは、果物やさつまいもなど自然な甘さのもの、または甘さ控えめのものを選ぶのがおすすめです。

脂っこいもの・辛いもの

揚げ物やスナック菓子、生クリームたっぷりのケーキは消化に時間がかかり、辛いものは体を温めて目がさえる原因になります。夕食後〜寝る前は控えめにしましょう。

寝る前の画面

スマホやタブレット、ゲームの明るい画面は、脳を「まだ昼間」と勘違いさせやすくなります。「おやつを食べたら画面はおしまい」のように、おやつを区切りに使うのも一つの方法です。スクリーンタイムとおやつの関係も参考にしてください。

ミネラルと眠り — マグネシウム・カルシウム・ビタミンD

マグネシウム

マグネシウムは神経や筋肉の働きを整えるミネラルで、トリプトファンからメラトニンがつくられる過程にも関わっています。豆腐や納豆などの大豆製品、ひじきやわかめなどの海藻、玄米、バナナ、ナッツ類に含まれます。日本の伝統的な食卓に多い食材なので、和食中心の献立は取り入れやすい環境です。くわしくはマグネシウムと子どもの集中力へ。

カルシウム

カルシウムは骨や歯だけでなく、神経の働きにも欠かせないミネラルです。乳製品のおやつは、トリプトファンとカルシウムを一緒にとれるのが利点。牛乳が苦手な子は、小魚、豆腐、小松菜なども活用しましょう。カルシウムと睡眠の質でも年齢別のおやつを紹介しています。

ビタミンDと日光

ビタミンD不足と睡眠の問題の関係を指摘する仮説もありますが(Gominak & Stumpf, 2012)、まだ確かめられている段階です。それとは別に、朝の光を浴びて日中に外で体を動かすことは、体内時計を整えるうえで大切です。週末の公園遊びは、それだけで夜の眠りへの準備になります。

眠りにつながる夜のルーティン

食べ物の工夫は、生活のリズムと組み合わせたときにいちばん力を発揮します。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間の睡眠が目安として示されています。逆算して、毎晩だいたい同じ流れで過ごせるようにしてみましょう。

就寝までの目安すること
2時間前夕食を済ませる。夕食後はカフェインを含む飲み物を出さない
1時間半〜1時間前お風呂。ぬるめのお湯で温まり、上がったあと体温が下がっていくときに眠気が出やすくなります
1時間前小腹がすいていれば、軽いおやすみおやつ。部屋の照明を少し落とす
30分前画面はおしまい。歯みがき、絵本、今日のできごとのおしゃべり
就寝暗く静かで、暑すぎも寒すぎもしない部屋で

おやすみおやつの1週間

  • 月曜:ホットミルク
  • 火曜:バナナ+ヨーグルト
  • 水曜:きな粉ミルク
  • 木曜:ふかしいも
  • 金曜:チーズ+全粒粉クラッカー
  • 土曜:甘酒の牛乳割り
  • 日曜:小さなしらすおにぎり

毎日おやつが必要なわけではありません。夕食をしっかり食べた日はなしでも大丈夫。「おなかすいた?」と聞いて、必要な日だけ出す柔軟さで十分です。おやつと眠りの関係はおやつと睡眠の科学でもくわしく紹介しています。

年齢別のポイント

1〜2歳

寝る前は、ホットミルクやつぶしたバナナなど、ごくシンプルなもので十分です。はちみつは1歳未満には与えません。ナッツや豆は丸ごとは与えず、ペーストを使いましょう。

3〜5歳

「どっちにする?」と2〜3つの中から選ばせると、寝る前の時間を楽しい儀式にできます。消費者庁は、5歳以下の子どもには豆やナッツ類など硬くてかみ砕く必要のある食品を食べさせないよう呼びかけています。ミニトマトやぶどうは4等分に切って。

小学生

ひと通りのおやつを楽しめる年齢です。一方で、緑茶やチョコレート、コーラなどでカフェインをとる機会が増えるので、夕方以降は気をつけましょう。くるみなどのナッツを使う場合、くるみは食物アレルギー表示が義務づけられている特定原材料のひとつなので、初めて食べるときは少量から。

中学生・高校生

体内時計が後ろにずれやすく、夜ふかしになりがちな年代です。塾帰りの夜食は、カップ麺やスナック菓子より、おにぎりや具だくさんのスープ、ヨーグルトなどを。エナジードリンクやコーヒーで眠気をごまかす習慣には注意しましょう。受験期の過ごし方は受験期の「崩れない1日ルーティン」も参考にしてください。

こんなときは小児科へ

食事やルーティンの工夫は眠りを支える手段であって、睡眠の病気そのものに対処するものではありません。次のような様子があれば、かかりつけの小児科に相談しましょう。

  • 生活リズムを整えても、寝つくまでに毎晩とても時間がかかる
  • 夜中に何度も起きる状態が続く
  • いびきが大きい、寝ている間に呼吸が止まる・あえぐ、口を開けて寝ている
  • 十分寝ているはずなのに、日中ひどく眠そう、イライラが強い
  • 不安や怖さで眠れない
  • 夢中遊行(寝ぼけて歩く)や夜驚(夜中に突然泣き叫ぶ)がたびたびある

メラトニンのサプリについて、もう一度

日本ではメラトニンは医薬品の成分で、食品やサプリメントとしては販売されていません。海外で子ども向けに売られているメラトニンのグミなどを、自己判断で与えることはやめましょう。眠りの悩みが続くときは、小児科で相談すれば、生活リズムの見直しから必要に応じた治療まで、その子に合った方法を一緒に考えてもらえます。

よくある質問

メラトニンを含む食べ物はありますか?

さくらんぼ、ぶどう、トマト、くるみ、きのこ、穀物など、さまざまな食べ物にごく少量のメラトニンが含まれていることがわかっています。ただ、含まれる量は品種や栽培条件で大きく違い、食べたものがどのくらい体に取り込まれて眠りに影響するかは、まだはっきりしていません。特定の食品に頼るより、メラトニンの材料になるトリプトファンを含む乳製品・大豆製品・卵・魚などを毎日の食事でとり、朝の光と規則正しい生活で体内時計を整えることを大切にしましょう。

子どもにメラトニンのサプリを飲ませてもいいですか?

おすすめしません。日本ではメラトニンは医薬品の成分として扱われていて、食品やサプリメントとしての販売は認められていません。海外で売られている子ども向けのメラトニングミなどを、個人輸入や通販で自己判断で与えるのはやめましょう。小児の一部の入眠困難には、医師が診察したうえで処方する医療用医薬品があります。寝つきの悪さが続くときは、まずかかりつけの小児科に相談してください。

寝る前のおやつは、何時ごろまでに食べればいいですか?

布団に入る1時間前くらいまでに食べ終えるのがひとつの目安です。寝る直前にたくさん食べると、胃腸が働いたままで寝つきにくくなることがあります。量は子どもの片手にのるくらいの軽いものにして、ホットミルク、バナナとヨーグルト、小さなおにぎり、ふかしいもなど、脂っこくなく甘さ控えめのものを選びましょう。夕食をしっかり食べた日は、おやつなしでも大丈夫です。

眠りをじゃましやすい食べ物や飲み物はありますか?

いちばん気をつけたいのはカフェインです。コーヒーだけでなく、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、紅茶、コーラ、エナジードリンク、チョコレートにも含まれていて、大人の研究では寝る6時間前のカフェインでも睡眠が乱れたと報告されています。夕方以降は麦茶や水を選びましょう。ほかにも、甘いお菓子のとりすぎ、揚げ物などの脂っこいもの、辛いものは、寝る前には控えめにするのがおすすめです。

ホットミルクは本当に眠りにいいのですか?

牛乳には、メラトニンの材料になるトリプトファンや、神経の働きに関わるカルシウムが含まれています。ただし、ホットミルク1杯で眠りが大きく変わるというより、温かい飲み物でほっとすることや、「これを飲んだら寝る」という毎晩の合図になることの意味が大きいと考えられます。甘みをつけるなら少量のはちみつを使い、1歳未満の子にははちみつを与えないでください。

参考文献

タイプ別アドバイス

🏃 アクティブ派

外遊びやスポーツで体をたくさん動かした日は、寝る前に小腹がすきやすいもの。そんな夜は、小さな鮭おにぎりやバナナ+ヨーグルトで、空腹で目がさえるのを防ぎましょう。練習帰りに買う緑茶やコーラにはカフェインが含まれるので、夕方以降は麦茶か水に切り替えるのがおすすめです。

🎨 クリエイティブ派

「おやすみおやつ」を1週間分、子どもと一緒にカレンダーに描いて決めてみましょう。今日はきな粉ミルク、明日はふかしいも——自分で決めたメニューなら、寝る前の流れに乗りやすくなります。マグカップを「おやすみ専用」にするなど、小道具で儀式感を出すのも楽しい工夫です。

😌 リラックス派

寝る前の時間は、ホットミルクを飲みながら今日のできごとをゆっくり話す時間に。照明を少し落として、画面は片づけて、急がせない雰囲気をつくることがいちばんの準備です。毎晩完璧でなくてかまいません。だいたい同じ流れで過ごせる日が増えていけば十分です。

この記事は2026年10月時点の情報に基づいています。個別の食事アドバイスについてはかかりつけの小児科医にご相談ください。

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