男の子の成長スパートで起きていること
男の子の思春期は、おおむね9〜14歳ごろに始まり、3〜5年かけて進みます。女の子より始まりが2年ほど遅く、身長がいちばん伸びる時期は中学生のころに来る子が多く、1年で10cm近く伸びる子もいます(Rogol et al., 2002)。骨の伸びに筋肉や腱が追いつかず、ひざやかかとが痛むこともあります。
体の中で同時に進んでいる「工事」
| 体のしくみ | 起きていること | とくに必要な栄養 |
|---|---|---|
| 骨 | 骨が長く太くなり、大人の骨量の土台がつくられる | カルシウム、ビタミンD、たんぱく質 |
| 筋肉 | 男性ホルモンの働きで筋肉量が大きく増える | たんぱく質、亜鉛、ビタミンB群、十分なエネルギー |
| 血液・心臓 | 体が大きくなるのに合わせて血液量が増える | 鉄、葉酸、ビタミンB12 |
| 脳 | 神経回路の整理が進み、判断力にかかわる部分が育つ | DHAなどの魚の脂、鉄、亜鉛、ビタミンB群 |
これだけの工事を同時に進めるので、必要なエネルギーも大きくなります。日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、15〜17歳の男子は、同じくらい体を動かす大人の男性より多くのエネルギーが必要とされています。運動部で毎日練習している子なら、さらに上乗せが必要です。いつもお腹をすかせているのは、食い意地ではなく、体が正直に必要量を伝えているサインです(Das et al., 2017)。
たんぱく質 — 体づくりの主役
たんぱく質は筋肉だけでなく、骨、血液、皮膚、ホルモンの材料にもなります。思春期の男の子は、生涯でもっとも速いペースで体をつくっている時期です。
どのくらい必要?
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、思春期の男子のたんぱく質の推奨量は、大人の男性とほぼ同じ水準に設定されています。体はまだ大人より小さいのに、必要量は大人並み——それだけ「材料」がいる時期だということです。具体的な数値は厚生労働省の資料で確認できますが、主食・主菜・副菜のそろった食事を1日3回とれていれば、多くの子は食事で十分にまかなえます。
「まとめ食い」より「毎食に分けて」
筋肉づくりの研究では、たんぱく質は1回にまとめて大量にとるより、毎食に分けてとるほうが体づくりに使われやすいと考えられています(Phillips, 2014)。朝はパンだけ、昼は給食、夜にお肉をどっさり——という偏りがあるなら、まず朝ごはんにたんぱく質を一品足すところから始めましょう。
| 食材(1回分の目安) | たんぱく質 | 使い方 |
|---|---|---|
| 卵 1個 | 約6g | ゆで卵を作り置き、卵かけご飯 |
| 牛乳 200ml | 約7g | 朝ごはん、部活のあと |
| 納豆 1パック | 約7g | 朝ごはん、納豆ご飯のおやつ |
| 木綿豆腐 100g | 約7g | 味噌汁、冷ややっこ |
| 鮭 1切れ(80g) | 約18g | 夕食の焼き魚、鮭おにぎり |
| 鶏むね肉(皮なし)100g | 約22g | から揚げ、照り焼き、お弁当 |
| プレーンヨーグルト 100g | 約4g | 帰宅後のおやつ |
数値は日本食品標準成分表をもとにした目安です。
和食の「一汁三菜」は、たんぱく質を分散させる知恵
焼き魚、豆腐の味噌汁、卵焼き、ほうれん草のごま和え、ご飯。日本の定食スタイルは、ひとつの食事の中に魚・大豆・卵といった複数のたんぱく源が自然に入る形になっています。食材がばらけることで、栄養素の偏りも起きにくくなります。手のこんだ献立でなくても、「主菜+汁物に豆腐か卵」を合言葉にするだけで、たんぱく質はぐっと安定します。たんぱく質おやつのアイデアは子どものタンパク質おやつ完全ガイドにまとめています。
亜鉛 — 目立たないけれど成長に欠かせない
亜鉛は、細胞が分裂して体が大きくなるとき、傷ついた皮膚を修復するとき、免疫が働くとき、そして舌で味を感じるときに必要なミネラルです。体の中で新しい細胞がどんどんつくられる思春期には、見落とせない栄養素です。
亜鉛が足りないときに見られやすいこと
- すり傷や切り傷の治りが遅い
- かぜをひきやすい
- 食欲が落ちる(食べないことで、さらに不足しやすくなる悪循環に)
- 味がわかりにくい、味つけを極端に濃くしたがる
- 身長の伸びがゆっくり
これらは亜鉛以外の原因でも起こるので、気になるときはかかりつけ医に相談しましょう。
亜鉛の多い食材
| 食材 | ほかにとれる栄養 | 取り入れ方 |
|---|---|---|
| かき(牡蠣) | 鉄、ビタミンB12 | かきフライ、鍋。しっかり加熱して |
| 牛肉(赤身) | 鉄、たんぱく質 | 牛丼、焼き肉、炒め物 |
| 豚レバー | 鉄、ビタミンA | レバにら炒め |
| 卵 | たんぱく質、ビタミンB群 | 毎日の朝ごはんに |
| 納豆・高野豆腐 | たんぱく質、鉄 | 朝ごはん、煮物 |
| チーズ | カルシウム、たんぱく質 | おやつ、トースト |
| かぼちゃの種・カシューナッツ | マグネシウム、鉄 | おやつのナッツミックス |
亜鉛と成長の関係は亜鉛と子供の成長でくわしく紹介しています。手軽なおやつなら亜鉛パンプキンシードクラスターもおすすめです。
カルシウムとビタミンD — 骨づくりは今がいちばんの稼ぎどき
10代は、骨の量を増やせる一生に一度の時期です。骨量は思春期に急速に増え、20歳前後で最大に近づき、その後はゆっくり減っていきます。男の子では、身長がいちばん伸びる時期と、骨量がいちばん増える時期がほぼ重なります(Weaver et al., 2016)。
日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、男性では12〜14歳がカルシウムの推奨量のもっとも高い年代のひとつ。ここで少しずつ不足が続くと、本来つくれたはずの骨の貯金を取り逃がしてしまいます。
男の子の1日にカルシウムを組み込む
- 朝:牛乳コップ1杯(200ml、カルシウム約220mg)か、ヨーグルト
- 給食:ほぼ毎日出る牛乳は、大切なカルシウム源
- 補食:チーズ、小魚アーモンド、牛乳やヨーグルトで作るスムージー
- 夕食:厚揚げや豆腐、小松菜、しらす干し、桜えび
給食のない土日や長期休みは、牛乳1本分がまるごと抜けがちです。休日の朝ごはんやおやつで補う習慣をつけておきましょう。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるので、鮭やさんまなどの魚、卵、きのこ類に加えて、部活や外遊びで日光を浴びる時間も大切です。骨づくりのおやつはカルシウムと骨成長も参考にしてください。
鉄 — 男の子も成長期は不足しやすい
鉄不足は女の子の話と思われがちですが、男の子も体が大きくなるにつれて血液量が増え、そのぶん鉄が必要になります。日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、思春期の男子の鉄の推奨量は大人の男性より多く設定されています。
とくに気をつけたいのは、長距離走やバスケットボール、バレーボールなど、走る・跳ぶ量の多い競技をしている子。汗で鉄が失われるうえ、足裏への強い衝撃などで赤血球が壊れやすく、いわゆる「スポーツ貧血」が起こることがあります。休んでも疲れがとれない、集中しにくい、顔色が悪い、記録が急に伸びなくなった——そんなときは、練習量だけでなく食事も見直してみましょう。
鉄をとりやすい食事・補食
- 牛肉とピーマン・ブロッコリーの炒め物(鉄+ビタミンC)
- あさりの味噌汁、あさりの炊き込みご飯
- かつおのたたき、まぐろ丼
- 納豆ご飯+みかんやキウイ
- 牛そぼろのおにぎり
脳を育てる栄養 — 勉強にも部活にも
思春期の脳では、使われない神経のつながりが整理され、よく使うつながりが強化される「組み替え」が進んでいます。判断や感情のコントロールにかかわる前頭前野は、20代半ばまで発達を続けるといわれています。この時期の脳も、たくさんの栄養を必要としています。
- DHA・EPA(魚の脂):脳の神経細胞の膜をつくる材料。さば、いわし、さんま、鮭などの魚に多く含まれます。魚が苦手な子向けの工夫はオメガ3脂肪酸が摂れる子どものおやつガイドへ
- 鉄:脳に酸素を届けるのに欠かせません。不足すると集中力や持久力が落ちやすくなります
- 亜鉛:神経の情報伝達にかかわります
- ビタミンB群:脳がエネルギーを使うときに必要。肉、魚、卵、乳製品、豆類、玄米や胚芽米などに含まれます
塾の前の「鮭おにぎり」
コンビニでも定番の鮭おにぎりは、ご飯のエネルギー、鮭のたんぱく質とDHA、のりのミネラルがひとつにまとまった、手軽で優秀な補食です。塾の前や部活のあとに「何を買えばいい?」と聞かれたら、「鮭おにぎりと牛乳」と答えておけば、まず間違いありません。
「いつもお腹がすいている」への補食の工夫
夕飯を作り終えた30分後に「ほかに何かある?」——これは成長期の男の子ではごく自然なことです。3回の食事だけでは足りないことが多いので、補食を「4回目の食事」と考えて、栄養のあるものをすぐ食べられるようにしておきましょう。
腹持ちがよく、栄養もとれる補食アイデア
- おにぎり2個:鮭・ツナ・しらす・卵そぼろなど、具でたんぱく質をプラス
- 納豆ご飯や卵かけご飯:3分でできて、たんぱく質もとれる頼れる定番
- 具だくさんうどん:冷凍うどんに卵、ねぎ、鶏肉やかまぼこを入れて
- チーズトースト+牛乳:カルシウムとたんぱく質を一度に
- バナナ牛乳スムージー:牛乳200ml、バナナ1本、きな粉大さじ1をミキサーで
- ヨーグルトボウル:プレーンヨーグルトにバナナ、くるみ、グラノーラ少量
キッチンに常備しておきたいもの
お腹がすいた子が、自分で手を伸ばしたときに「いいもの」を選べる環境をつくっておくのがコツです。
- 卵(ゆで卵を数個作り置きしておくと便利)
- 冷凍ご飯、冷凍うどん、食パン
- 牛乳、プレーンヨーグルト、チーズ
- 納豆、豆腐
- ツナ缶、さば缶
- バナナ、みかん、りんごなど季節の果物
- 素焼きナッツ、小魚アーモンド
- 冷凍ブロッコリーなどの冷凍野菜
部活や競技別の補食の考え方はスポーツをする子の補食ガイド、中学生ならではのコンビニ事情は中学生の思春期おやつ戦略でも紹介しています。
男の子と体へのこだわり — 見落とされがちな話
体型の悩みは女の子の話と思われがちですが、男の子も体に不満を抱えることがあります。男の子の場合は「細く」より「大きく、筋肉質に」という方向に向かいやすく、サプリメントへののめり込み、極端な増量や減量、過度なトレーニングにつながることがあります。逆に、「太っている」と思い込んで食事を減らしてしまう子もいます。
気にかけたいサイン
- プロテインやサプリメント、「筋肉増強」をうたう商品への強いこだわり
- 部活の練習以上に、休まずトレーニングを続けてしまう
- 食べ物の量や栄養素を細かく数え続けて、外食や家族の食事を避ける
- 自分の体の大きさを恥ずかしがる、強く否定する
- 男性ホルモンを増やすとうたう海外製品への興味(成長期の体にはとても危険です)
- 食べ方が急に大きく変わった
「見た目」より「できること」で話す
声をかけるときは、「かっこよくなるために食べる」ではなく、「しっかり食べると、速く走れる、集中できる、けがから回復しやすい」という、体の働きに目を向けた話し方がおすすめです。筋肉は、毎日の練習と食事と睡眠を何年も積み重ねてつくられるもので、近道はありません。くわしくは子供のボディイメージと食事もあわせてどうぞ。
よくある質問
成長期の男の子は、どのくらい食べれば足りますか?
必要な量は、体の大きさや運動量によって大きく変わります。日本人の食事摂取基準(2025年版)では、15〜17歳の男子は同じくらい体を動かす大人の男性より多くのエネルギーが必要とされていて、毎日練習する運動部の子はさらに上乗せが必要です。数字を細かく計算するより、元気に動けているか、練習後に回復できているか、学校の健康診断の身長・体重が成長曲線に沿っているかを目安にしましょう。疲れやすい、体重が減ってきた、身長の伸びが止まったように見えるときは、かかりつけの小児科に相談してください。
プロテインやサプリメントは飲ませたほうがいいですか?
多くの子は、毎日の食事と補食で必要なたんぱく質をまかなえます。まずは卵、牛乳、納豆、魚、肉を毎食に分けて取り入れる「食事が先」の考え方がおすすめです。部活で食事が追いつかないときに、シンプルなプロテインを補助的に使うこと自体は珍しくありませんが、「筋肉増強」「男性ホルモンを増やす」などをうたう製品や、成分のはっきりしない海外製品は成長期の体には勧められません。使う前に、医師や部活の指導者、管理栄養士に相談しましょう。
男の子の身長がいちばん伸びるのはいつごろですか?
男の子は女の子より思春期の始まりが2年ほど遅く、身長がいちばん伸びる時期は中学生のころに来る子が多く、1年で10cm近く伸びる子もいます。ただし時期には大きな個人差があり、小学校高学年で伸びはじめる子もいれば、高校生になってから伸びる子もいます。伸びの時期を左右する成長ホルモンなどの働きは、十分な栄養と睡眠に支えられています。気になるときは、健康診断の記録を成長曲線に書き込んで、かかりつけ医に見てもらうと安心です。
中学生から筋トレをしても大丈夫ですか?
正しいフォームで、指導者のもとで段階的に負荷を上げていくのであれば、思春期の筋力トレーニングは安全で有益とされています(American Academy of Pediatrics, 2020)。そのうえで大切なのが食事です。練習後はおにぎりと牛乳、ヨーグルトとバナナのように、エネルギーとたんぱく質を一緒にとれる補食を用意しましょう。食事が足りないままトレーニングだけ増やすと、けがや疲れの原因になります。
息子がいつもお腹をすかせています。食べさせすぎではないでしょうか?
成長期の男の子にとって、強い空腹はごく自然なことです。骨が伸び、筋肉が増え、血液量が増え、脳も発達している時期なので、たくさんのエネルギーと栄養が必要になります。量を減らすより、すぐ食べられるものの「質」を整えるのがおすすめです。おにぎり、卵、牛乳、ヨーグルト、果物、冷凍うどんなどを常備しておけば、1日3食に加えて2〜3回の補食をとっても、栄養のバランスは保ちやすくなります。
参考文献
- Das, J.K. et al. (2017). "Nutrition in adolescents: physiology, metabolism, and nutritional needs." Annals of the New York Academy of Sciences, 1393(1), 21-33.
- Weaver, C.M. et al. (2016). "The National Osteoporosis Foundation's position statement on peak bone mass development and lifestyle factors: a systematic review and implementation recommendations." Osteoporosis International, 27(4), 1281-1386. doi:10.1007/s00198-015-3440-3
- Rogol, A.D. et al. (2002). "Growth at puberty." Journal of Adolescent Health, 31(6), 192-200.
- American Academy of Pediatrics (2020). "Resistance Training for Children and Adolescents." Pediatrics, 145(6), e20201011.
- Phillips SM. (2014). "A brief review of critical processes in exercise-induced muscular hypertrophy." Sports Medicine, 44(S1), 71–77. doi:10.1007/s40279-014-0152-3
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
タイプ別アドバイス
運動部の子は、練習が終わってから夕食までの「空白の時間」が勝負です。部活バッグにおにぎりやバナナを入れておき、帰宅後すぐに牛乳かヨーグルトを。走る・跳ぶ競技の子は鉄も不足しやすいので、夕食に赤身の肉や魚、あさりの味噌汁を意識して、疲れが抜けないときは練習量と一緒に食事も見直しましょう。
「自分で作れる補食」を1品ずつ増やしていくのがおすすめです。卵かけご飯、チーズトースト、冷凍うどんの具だくさんアレンジなど、自分好みに具を工夫できるものから任せてみて。部活の記録や体の変化と、食べたものを一緒に記録してみると、「食べると調子がいい」を自分で発見できます。
思春期の男の子は、食事について口うるさく言われるのを嫌がりがちです。言葉で伝えるより、すぐ食べられるおにぎりやゆで卵、果物を冷蔵庫に用意しておく「環境づくり」のほうが効果的。たくさん食べたときは「よく食べたね、背が伸びるわけだ」と、量を肯定する声かけで安心させてあげましょう。