食べ物に込められた新年の願い
旧正月は、月の満ち欠けをもとにした旧暦(太陰太陽暦)の新年で、毎年1月下旬〜2月中旬ごろにやってきます。中国語圏では「春節」と呼ばれ、大みそかの夜は家族が集まってごちそうを囲み、数日間にわたってお祝いが続きます。日本も明治のはじめまでは旧暦でお正月を祝っていましたが、今は新暦の1月1日がお正月。だからこそ、同じ「新年を祝う食卓」をくらべてみると、似ているところと違うところが見えてきておもしろいのです。
中国では、縁起のいい言葉と音が通じる食べ物が好まれます。魚(鱼、yú)は「余(ゆとり)」と同じ発音で、「年年有余(毎年ゆとりがありますように)」の願いを込めて食卓に。もち米の餅「年糕(niángāo)」は「年々高く(年ごとに向上する)」に通じます。北のほうでは、昔のお金の形に似た餃子を大みそかに家族で包んで食べる習慣があり、みかんなどの柑橘は「吉」や「金」に音が通じる縁起物として贈り合います。
韓国の旧正月「ソルラル(설날)」には、薄く切った餅を入れたスープ「トックク(떡국)」を食べます。「トッククを1杯食べると1つ年をとる」と言われていて、早く大きくなりたい子どもたちがおかわりをする、という微笑ましい話もあります。日本のお雑煮とよく似ていますね。
日本のお正月のおせち料理にも、たくさんの願いが込められています。黒豆は「まめに(元気に、まじめに)暮らせるように」、数の子は「子孫繁栄」、黄金色の栗きんとんは「豊かな一年に」。アジアの新年の食卓は、言葉や形に願いを託すという点でよく似ています。
なお、どの国でも地域や家庭によって習慣はさまざまです。ここで紹介するのはその一部。もしアジアにルーツのあるお友だちがいたら、「おうちではどうやってお祝いするの?」と聞いてみるのも、すてきな学びになります。
日本で春節の味にふれるなら
日本でも、中国系の人たちが暮らしてきた街では春節のお祝いが行われています。横浜中華街では春節の時期に獅子舞が街をめぐり、神戸・南京町では春節祭、長崎では街じゅうにランタンを灯すランタンフェスティバルが開かれます。肉まんやごま団子、杏仁豆腐、焼き小籠包などを食べ歩きながら、本場の雰囲気を感じられる貴重な機会です。
出かけるのが難しくても、家で餃子を包んだり、中華街で買ってきた食材でおやつを作ったりするだけで、立派な「春節体験」。中華食材店や韓国食材店、最近は大きめのスーパーでも、黒ごまペーストや韓国の餅(トック)が手に入ります。世界の行事食をもっと知りたい方は世界のおやつ文化と子どももどうぞ。
中国:湯圓(タンユエン)— 甘さ控えめのごまあん入り白玉
湯圓(汤圆)は、もち米の粉で作る丸い団子を温かいスープで食べる中国の甘味です。春節から元宵節(旧暦1月15日)にかけてよく食べられ、丸い形は「家族がそろって円満であること」を表します。みんなでテーブルを囲んで団子を丸める時間そのものが、お祝いの一部です。日本の白玉粉で手軽に作れます。
材料(約20〜24個分)
| パーツ | 材料 | 分量 |
|---|---|---|
| 生地 | 白玉粉 | 200g |
| 生地 | 水 | 約180ml(様子を見ながら) |
| 黒ごまあん | 黒ねりごま | 80g |
| 黒ごまあん | アルロース | 20g |
| 黒ごまあん | 無塩バターまたはココナッツオイル | 大さじ1 |
| しょうがのスープ | 水 | 1L |
| しょうがのスープ | しょうが(薄切り) | 3枚 |
| しょうがのスープ | アルロース | 40g |
作り方:黒ごまあんの材料を混ぜ、冷蔵庫で30分ほど冷やして固めておきます。白玉粉に水を少しずつ加え、耳たぶくらいのやわらかさになるまでこねます。生地を小さめ(直径2cmほど)に分けて平たくし、あんを小さく丸めて包み、手のひらで転がして丸く整えます。しょうがの薄切りとアルロースを入れたスープを沸かし、団子を入れて浮いてきてからさらに2分ほどゆでます。器にスープごと盛りつけて。
中国では、ピーナッツあんも定番です。無糖のピーナッツバターにアルロースを混ぜて作れますが、落花生はアレルギー表示の対象なので、友だちと一緒に食べるときは事前に確認を。もち米の団子はのどに詰まりやすいので、幼児には小さく切って出し、座って、よく噛んで食べるように見守ってください。もちや白玉を安全に楽しむコツはもちガイド、年齢別の形やサイズの目安は幼児の窒息予防にまとめています。
日本:栗きんとん — アルロースでつやよく
おせちでおなじみの栗きんとんは、黄金色が「金運」や「豊かさ」を表すお正月の甘味。旧正月の食卓とくらべてみるのにぴったりの一品です。昔ながらのレシピは砂糖をたっぷり使いますが、アルロースでも照りのある仕上がりになります。
材料(約12人分)
- さつまいも — 500g
- 栗の甘露煮 — 12〜15粒(シロップを切り、さっと水で洗う)
- アルロース — 60g
- みりん — 大さじ1
- 塩 — ひとつまみ
- くちなしの実(色づけ用、なくてもOK) — 1個
作り方:さつまいもは皮を厚めにむいて2cm厚さの輪切りにし、水にさらします。くちなしの実を割ってお茶パックに入れ、さつまいもと一緒に竹串がすっと通るまで15分ほどゆでると、鮮やかな黄色に仕上がります。湯を捨て、熱いうちにつぶすか裏ごしし、アルロース・みりん・塩を加えて弱火で練ります。つやが出てとろりとしたら火を止め、栗をさっくり混ぜて小さく盛りつけます。
さつまいもは、ゆっくり加熱するとでんぷんが糖に変わり、甘みが増します。焼きいもが甘いのと同じしくみです。栗の甘露煮はそれ自体に糖分を含むので、量はほどほどに。丸ごとの栗は小さな子にはのどに詰まりやすいので、刻んで混ぜると安心です。さつまいものおやつはさつまいもフェスティバルでも紹介しています。
韓国:ソンピョン — 上新粉で作る半月形のお餅
ソンピョン(송편)は、ごまや豆のあんを包んで蒸す、半月形の小さなお餅です。本来は旧暦8月15日の「秋夕(チュソク)」の行事食で、お正月のトッククと並ぶ韓国の代表的な行事のお餅。日本の上新粉で作れて、子どもの手にちょうどいい大きさなので、韓国の年中行事を知る入り口として紹介します。
材料(16〜20個分)
- 上新粉 — 200g
- 熱湯 — 120〜150ml(様子を見ながら)
- 塩 — ひとつまみ
- ごまあん:すりごま60g+アルロース30g+シナモン少々(+水小さじ1〜2)
- こしあん — 80g(市販のもの)
- ごま油 — 仕上げに少量
作り方:上新粉に塩を混ぜ、熱湯を少しずつ加えながらへらで混ぜます。手でさわれる温度になったら、なめらかになるまでよくこねます(熱いので最初は大人が)。16〜20等分して丸め、平たくのばして小さじ1ほどのあんをのせ、半分に折って縁をしっかり閉じ、半月形に整えます。オーブンシートを敷いた蒸し器で20分ほど蒸し、熱いうちに表面に薄くごま油を塗ります。韓国では松葉を敷いて蒸し、ほのかな香りを移すのが伝統です。
韓国には「ソンピョンをきれいに作れる人は、きれいな子どもに恵まれる」という言い伝えがあり、子どもたちも夢中で形を整えます。上新粉はうるち米の粉なので、白玉粉のお餅よりも歯切れがよく、小さな子にも食べやすい食感です。それでも、食べるときはひと口ずつ、よく噛むように声をかけてください。韓国のおやつ事情は韓国の子供のおやつ文化で日本とくらべながら紹介しています。
中国:みかんの寒天コイン
みかんなどの柑橘は、中国語で「吉」や「金」に音が通じることから、春節の贈り物の定番です。そのみかんの果汁を寒天で固めて、金貨のような丸いゼリーにします。
- みかんの果汁(みかん約8個分、または果汁100%ジュース) — 400ml
- 粉寒天 — 4g
- 水 — 100ml
- アルロース — 15〜30g(みかんの甘さに合わせて)
作り方:鍋に水と粉寒天を入れて火にかけ、沸騰したら混ぜながら2分ほど煮て寒天をしっかり溶かします。火を止め、常温にしておいたみかん果汁とアルロースを加えて手早く混ぜ、平たいバットや丸いシリコン型に流します。冷蔵庫で1〜2時間冷やし固め、丸い型で抜くか、型から外します。約20〜24個分。
寒天は日本の和菓子でおなじみの材料で、常温でも固まり、食物繊維を多く含むのが特徴です。ゼラチンとの違いや使い分けはゼラチンvs寒天、もっとかためのグミにしたいときは寒天で作るグミを参考にしてください。
アジアの新年を彩る、ほかのおやつ
日本:ミニ鏡もち風白玉
鏡もちは、大小2つの丸いもちを重ね、上にだいだい(みかん)をのせる日本のお正月飾り。これを小さな白玉で再現します。白玉粉100gに絹ごし豆腐100gほどを少しずつ加えてこね、小と中の団子を作ってゆで、冷水にとります。中の上に小を重ね、みかんのひと房を小さく切ってのせれば完成。きな粉や黒みつ少々を添えて。豆腐を加えると時間がたっても固くなりにくく、子どもにも食べやすくなります。白玉は丸のままだとのどに詰まりやすいので、幼児には小さく切ってから。
韓国:ヤクパプ(薬食)風おにぎり
ヤクパプ(약밥)は、もち米になつめや栗、松の実を加え、しょうゆやごま油で味つけした韓国の甘いおこわで、旧暦1月15日の「テボルム」などに食べられます。おうちで作りやすいミニ版は、炊いたもち米(またはもち米を混ぜて炊いたご飯)150gに、アルロース30g、ごま油大さじ1、しょうゆ小さじ1、刻んだ干しなつめ(またはデーツ)30g、シナモン少々を混ぜ、小さなおにぎりに。小学生以上なら松の実20gを加えるとコクが出ます。ナッツをおやつに取り入れると満足感が得られやすいという大人の研究もあります(Tan & Mattes, 2013)。ただし、5歳以下の子どもには、松の実を含むナッツ類のように硬くてかみ砕く必要のある食品は与えないでください。
みんなで:おみくじ入りフルーツカップ
小さなカップに、角切りにしたマンゴー、ドラゴンフルーツ、キウイ、みかんなどを入れ、子どもが書いた「おみくじ」を折りたたんで添えます。アメリカの中華料理店でおなじみのフォーチュンクッキーは、じつは日本の「辻占煎餅(つじうらせんべい)」がルーツという説もあるそう。おみくじには、中国語の「新年快乐(シンニェン クァイラー)」、韓国語の「새해 복 많이 받으세요(セヘ ボン マニ パドゥセヨ)」、ベトナム語の「チュック・ムン・ナム・モイ」など、いろいろな国の「あけましておめでとう」を書いてみましょう。ライチやぶどうなど丸い果物は、幼児には小さく切ってから。
おうちで旧正月を楽しむヒント
アジアにルーツのある家庭も、はじめて旧正月にふれる家庭も、相手の文化への敬意を大切にしながら楽しむためのヒントです。
色に意味を込めて飾る:中国の春節で縁起がいいとされる色は赤と金。赤には魔よけの意味もあります。赤い紙に「福」の字を書いて逆さに貼る「倒福」は、「福が到(いた)る」という語呂合わせ。日本のお正月の紅白とくらべてみると、赤がおめでたい色だという共通点が見つかります。
一緒に作る:テーブルを囲んで湯圓を丸めたり、ソンピョンの形を整えたり、餃子を包んだり。手を動かしながらおしゃべりする時間そのものが、家族のつながりを大切にする旧正月らしい過ごし方です。
お話を添える:大みそかに現れる怪物「年獣(ニェンショウ)」は、赤い色と大きな音が苦手だったため、人々は赤い飾りを貼り、爆竹を鳴らして追い払った――という春節の昔話は、子どもたちに大人気です。中国の「紅包(ホンバオ)」と日本の「お年玉」のように、似た習慣を探すのも楽しい発見になります。
感謝と願いを伝える:旧正月は、目上の人を敬い、一年の感謝を伝える行事でもあります。食べる前に、家族一人ひとりが「去年うれしかったこと」と「今年がんばりたいこと」をひとつずつ話してみてはいかがでしょう。お正月から続く1月のおやつのアイデアは1月のおやつカレンダーにもまとめています。
タイプ別アドバイス
週末は横浜中華街や神戸・南京町、長崎のランタンフェスティバルへ。獅子舞を追いかけてたっぷり歩いたら、食べ歩きは肉まんを家族で半分こにして、甘いものはひとつだけ選ぶのがコツ。帰ったら寒天コインでさっぱりと。
赤い画用紙で「福」の飾りやランタンを作り、ソンピョンの形や色(黒ごま・こしあん・抹茶生地など)を自由にアレンジ。おみくじフルーツカップのおみくじに、いろいろな国の「あけましておめでとう」を書く文字デザインも楽しめます。
寒い夜は、しょうがの香る湯圓を家族でゆっくり。団子を丸めながら、年獣の昔話や、トッククを食べると1つ年をとるお話を。おせちの栗きんとんの意味とくらべて、「どこの国も新年に願うことは似ているね」と話すひとときが、いちばんの食育です。
よくある質問
旧正月に丸い食べ物を食べるのはなぜですか?
丸い形には「欠けるところがない」「家族がそろって円満」という意味があります。中国の湯圓や、日本の鏡もち、韓国のお餅など、アジアの新年には丸いもち米の食べ物がよく登場し、家族の再会や新しい一年の始まりを表します。みんなで団子を丸めること自体が、家族のつながりを確かめるお祝いの一部になっています。
旧正月の伝統的なお菓子は、甘さが強いのですか?
国や家庭によってさまざまです。あんこや黒ごま、さつまいも、栗など、素材の甘みを生かしたものも多い一方、お祝いの席では砂糖をたっぷり使うお菓子も並びます。手作りするなら、甘みの量を自分で調整できるのが利点です。この記事では、砂糖の代わりにアルロースを使い、果物や芋の自然な甘さを生かすレシピにしています。
小麦を使わずに作れますか?
白玉粉や上新粉は米の粉なので、もともと小麦を使っていません。湯圓、ソンピョン、栗きんとん、寒天コイン、鏡もち風白玉は、小麦なしで作れます。ただし、ヤクパプに使うしょうゆは一般的に小麦を含むので、小麦アレルギーがある場合は小麦不使用と表示されたしょうゆを選び、そのほかの市販品も原材料表示を確認してください。
材料はどこで買えますか?
白玉粉、上新粉、粉寒天、こしあん、黒ねりごま、栗の甘露煮は、一般的なスーパーの製菓・乾物コーナーで手に入ります。韓国の餅(トック)や干しなつめは、韓国食材店や大きめのスーパー、通販で探してみてください。横浜中華街や神戸・南京町などの中華食材店をのぞくと、ほかにもいろいろな春節の食材が見つかります。
子どもに旧正月の文化をどう伝えればいいですか?
食べ物にまつわるお話から始めるのがおすすめです。魚は「ゆとり」、餃子は「お金」、丸い団子は「家族円満」を表すことを話しながら一緒に作ると、自然と興味がわきます。中国の紅包と日本のお年玉、トッククと日本のお雑煮のように、似た習慣をくらべるのも楽しい学びに。アジアにルーツのある友だちに、おうちでの過ごし方を聞いてみるのもいいですね。
参考文献
- Chang, K.C. (ed.) (1977). Food in Chinese Culture: Anthropological and Historical Perspectives. Yale University Press.
- Ohnuki-Tierney, E. (1993). Rice as Self: Japanese Identities through Time. Princeton University Press.
- Pettid, M.J. (2008). Korean Cuisine: An Illustrated History. Reaktion Books.
- Tan S.Y. & Mattes R.D. (2013) Appetitive, dietary and health effects of almonds consumed with meals or as snacks: a randomized, controlled trial. European Journal of Clinical Nutrition, 67(11), 1205-1214. doi:10.1038/ejcn.2013.184
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
- 消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥(ごえん)事故に注意!」