食育コラム

保育園のおやつ事情|栄養士の視点で考える園での間食のあり方

午後3時、お昼寝明けの子どもたちが目をこすりながらテーブルにつく。その日のおやつが蒸しパンでもおにぎりでも、「おいしいね」と顔がほころぶ瞬間は、保育の一日の中でも特別な時間です。この記事では、厚生労働省の資料をもとにした間食の位置づけから、砂糖控えめメニューへの切り替え方、配慮が必要な子どもへの工夫、保護者との連携まで、保育士・栄養士・園長先生に役立つ考え方を整理しました。

本記事は、Smart Treats編集部が公的機関の資料や研究論文をもとにまとめたものです。専門家への取材や監修は行っていません。気になる症状や個別の相談は、かかりつけの医師・歯科医師・管理栄養士などにご相談ください。

この記事でわかること

保育園の間食の位置づけと栄養の考え方

保育園のおやつは、家庭のおやつとは少し役割が違います。幼児は胃が小さく、3回の食事だけでは1日に必要なエネルギーや栄養素をとりきれないことがあります。そのため園の間食は、お楽しみであると同時に「食事を補う小さな食事」として考えられてきました。厚生労働省の「児童福祉施設における食事の提供ガイド」でも、子どもの発育・発達に応じた食事の一部として間食をとらえ、施設ごとに栄養管理を行う考え方が示されています。

間食のエネルギーの目安

一般に、幼児の間食は1日のエネルギーの10〜20%程度が目安とされています。これを「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の推定エネルギー必要量(身体活動レベル「ふつう」)にあてはめると、おおよそ次のようになります。実際の給与栄養目標量は、園児の年齢構成や体格、家庭での食事の状況をふまえて各園で設定してください。

年齢区分 エネルギーの目安(概算) よくある提供パターン
1〜2歳1日の10〜20%(約90〜190kcal)午前+午後の2回に分けて
3〜5歳1日の10〜20%(約130〜260kcal)午後1回(延長保育では補食も)

おやつで補いたい栄養素

  • エネルギー: 午後の遊びを支える分。おにぎり、いも類、蒸しパンなど主食系が中心
  • たんぱく質: 牛乳・ヨーグルト・チーズ、豆腐やきな粉などの大豆製品
  • カルシウム: 食事だけでは不足しやすい栄養素。乳製品、しらす、小松菜など
  • 鉄: 幼児期に不足しやすい栄養素。きな粉、青菜、赤身の魚・肉を使ったおかず系おやつ
  • ビタミン類・食物繊維: 季節の果物や野菜、さつまいも、かぼちゃ

大切なのは、「おやつ=甘いお菓子」ではないということです。おにぎり、ふかしいも、野菜入りのおやき、果物も立派なおやつ。食事の延長として栄養を補う発想に立つと、献立の幅がぐっと広がります。

現場の課題 — 砂糖・アレルギー・偏食・安全への対応

課題1: 甘いおやつが続きやすい

行事や子どもの人気を考えると、クッキーやケーキ、ゼリーなど砂糖を使うメニューが続きがちです。WHOは2015年のガイドラインで、遊離糖類を1日の摂取エネルギーの10%未満、望ましくは5%未満にすることを推奨しています(WHO, 2015)。3〜5歳の推定エネルギー必要量で換算すると、10%未満でも1日約30g強、5%未満なら約15g程度。甘いおやつ1回で、その日の目安の大きな部分を使ってしまうことがあります。年齢別のくわしい目安は子供の砂糖摂取量ガイドで確認できます。

課題2: アレルギー対応の複雑化

食物アレルギーのある園児への対応は、献立作り・調理・配膳・喫食のすべての段階で事故を防ぐ仕組みが必要です。加工食品を使う場合は、表示が義務づけられている特定原材料8品目と、表示が推奨されている20品目(あわせて28品目)を確認し、除去食・代替食の提供と誤食防止の手順を職員全員で共有しましょう。園のアレルギー緊急対応シミュレーションも参考にしてください。

課題3: 偏食・食わず嫌いへの対応

2〜4歳ごろは、初めての食べ物を警戒する「新奇性恐怖(ネオフォビア)」が目立ちやすい時期で、新しい食材を嫌がるのは発達のうえで自然な反応とされています。おやつの時間は食事よりもリラックスした雰囲気になりやすく、新しい食材と出会うよいきっかけになります。

課題4: 窒息・誤嚥の防止

消費者庁は、豆やナッツ類など硬くてかみ砕く必要のある食品を5歳以下の子どもに食べさせないこと、ミニトマトやぶどうなど丸い食品は4等分するなど小さく切って与えることを呼びかけています。おやつの形・大きさ・かたさは、献立段階からチェックしておきましょう。施設での具体策は施設でのおやつ事故防止ガイドにまとめています。

課題5: 人手と調理の負担

園の規模によって栄養士・調理員の体制はさまざまで、手の込んだ手作りおやつを毎日出すのは現実的ではない園も多いはずです。「少ない工程で作れて、栄養も補える」メニューのレパートリーを持っておくことが、続けるための鍵になります。

砂糖控えめメニューへの切り替え — 3ステップ導入法

「明日から砂糖ゼロ」は、子どもにも職員にも負担が大きすぎます。子どもが喜ぶ見た目と楽しさは残しつつ、段階的に砂糖を減らしていく進め方を紹介します。

ステップ1: 現状を見える化する(1〜2週間)

  • 現行の間食献立に使っている砂糖の量を、1品ずつ書き出す
  • 砂糖を多く使っているメニューを上から数品ピックアップする
  • 1週間あたりの「甘いおやつ」と「主食・おかず系おやつ」の回数を数える

数字にしてみると、職員同士で「ここから変えよう」という共通認識が持ちやすくなります。

ステップ2: 段階的に置き換える(1〜3か月)

置き換えの方法 具体例 ポイント
素材の甘さを生かすさつまいも蒸し、バナナ入り蒸しパン、かぼちゃ団子砂糖を加えずに甘みが出せる
砂糖の量を少しずつ減らすクッキーや蒸しパンの砂糖を、子どもの反応を見ながら段階的に減量一度に大きく減らさず、味の変化を小さく
おかず系おやつを増やすおにぎり、チーズトースト、野菜のおやき主食・たんぱく質の補給にもなる
果物・乳製品を中心にする季節の果物、プレーンヨーグルトビタミン・カルシウムを補える

甘味料を使う場合は、エリスリトールなどの糖アルコールはとりすぎるとおなかがゆるくなることがあるため、量を控えめにし、低年齢児には無理に使わないのが安心です。家庭で使われている甘味料の考え方は砂糖代替甘味料の比較で紹介しています。

ステップ3: 定着させて振り返る(3か月〜)

  • 新メニューの残食の様子を記録し、子どもの受け止め方を把握する
  • 残食が目立つメニューは、切り方・盛り付け・名前のつけ方などを工夫して再挑戦する
  • 定期的に砂糖使用量の推移を振り返り、おたよりなどで保護者にも共有する

配慮が必要な子どもとおやつ時間

おやつの時間は、栄養補給の場であると同時に、子どもが安心して「食べる経験」を積み重ねる場でもあります。感覚の過敏さや、見通しが持てないことへの不安を抱える子どもにとっては、おやつの内容だけでなく、出し方や環境が食べやすさを大きく左右します。

「砂糖で落ち着かなくなる」は本当?

「甘いものを食べると子どもが興奮する」とよく言われますが、砂糖が子どもの行動に与える影響については、はっきりした結論は出ていません(くわしくは「砂糖でADHD悪化」は本当?)。一方で、おなかがすきすぎると誰でも落ち着かなくなるのは確かです。主食やたんぱく質、食物繊維を含むおやつは腹持ちがよく、夕方まで機嫌よく過ごす助けになります。

感覚の過敏さへの配慮

食感・におい・温度・色などに敏感で、特定の食べ物を強く嫌がる子どももいます。おやつで気をつけたいポイント:

  • 予測しやすい食感から: 食べ慣れた食感のおやつを基本にし、少しずつバリエーションを広げる
  • 見てわかる安心感: 写真カードやイラストで、その日のおやつを事前に伝える
  • 段階を踏んだ出会い方: 新しいおやつは「見る→触る→においをかぐ→なめる→ひと口」と段階を踏む(フードチェイニングの考え方)
  • 残してもいい安心感: 「全部食べなくていいよ」と伝えることが、次の挑戦につながる

おやつ時間の流れをそろえる

見通しが持てることは、多くの子どもにとって安心材料になります。

  • おやつの時間をできるだけ毎日同じ時刻にする
  • 「手を洗う→座る→いただきます→食べる→ごちそうさま→麦茶」の流れを絵カードで示す
  • 選択肢を出すときは2〜3種類にしぼる
  • 食べる場所や座る席をなるべく固定する

こうした工夫は、配慮が必要な子どもだけでなく、すべての園児にとって落ち着いたおやつ時間につながります。個別の配慮が必要な場合は、保護者やかかりつけ医、療育機関と情報を共有しながら進めましょう。感覚統合とおやつの関係も参考になります。

魚をおやつに取り入れる

DHA・EPAなどのn-3系脂肪酸は、主に魚に含まれる脂質です。鮭フレークのおにぎりや、しらすのチーズトーストなど、おかず系のおやつに魚を取り入れると、カルシウムやたんぱく質とあわせて補いやすくなります。なお、くるみはアレルギー表示が義務づけられている特定原材料であり、5歳以下には硬いナッツ類を与えないよう呼びかけられているため、園のおやつで使う場合は慎重に検討してください。

保護者への伝え方と連携のコツ

砂糖控えめメニューへの移行で大切なのが、保護者の理解と協力です。「園のおやつが地味になった」と受け取られないよう、伝え方を工夫しましょう。

伝え方のポイント

  • 「減らす」より「プラス」で伝える: 「砂糖を減らします」ではなく「カルシウムや鉄もとれるおやつに変わります」
  • 数字で見せる: 以前のメニューと新メニューの砂糖使用量を比較表にする
  • 試食の機会をつくる: 保育参加や行事の際に味わってもらい、「砂糖控えめでもおいしい」を体験してもらう
  • 出典を添える: WHOのガイドラインや厚生労働省の資料など、根拠となる資料を紹介する

おたよりでの発信例

月1回の「食育だより」で、こんな内容を発信すると保護者の関心が高まります。

  • 今月のおやつのねらい(「今月は旬のさつまいもを使ったおやつ月間です」など)
  • 家庭でも作れる簡単レシピ
  • 季節の食材を使ったおやつの提案
  • おやつの時間の子どもたちの様子

保護者アンケートの項目例は保護者向けおやつ満足度調査テンプレートで紹介しています。

食材調達と衛生管理のポイント

食材調達のコスト管理

砂糖控えめメニューへの切り替えで心配されるのがコストです。さつまいも、バナナ、おにぎりなど素材を生かすメニューは、メニューの組み方しだいで市販の菓子と同程度か、それより抑えられることもあります。

  • 旬の食材を使う: 旬の野菜や果物は手に入りやすく、価格も安定しやすい
  • 地域の農家や業者と連携する: 規格外品の活用などを相談してみる
  • 大豆製品を活用する: きな粉、豆腐、おからパウダーは使い回しがきく

コストの考え方は施設向けコスト比較ガイドをご覧ください。

衛生管理の基本

手作りおやつを提供する際は、HACCP(ハサップ)の考え方を取り入れた衛生管理が欠かせません。厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、次のような点が示されています。

  • 調理後の食品は、できるだけ2時間以内に食べられるようにする
  • 原材料の納入時に検収を行い、記録を残す
  • 調理器具の洗浄・消毒を徹底する
  • 検食(保存食)は、原材料と調理済み食品を−20℃以下で2週間以上保存する
  • 調理従事者の健康状態を毎日確認し、定期的な検便を行う

園での具体的な手順はHACCP対応のおやつ提供チェックリストで解説しています。

まとめ — 保育園のおやつを「もっと楽しく、もっと賢く」

  1. おやつは「食事を補う小さな食事」 — 甘いものだけがおやつではない。おにぎり・いも・果物も立派なおやつ
  2. 砂糖は段階的に減らす — 見える化→置き換え→振り返りの3ステップで、子どもの「おいしい」を守りながら移行
  3. 安全は献立段階から — アレルギー表示と、年齢に合った形・大きさ・かたさを確認
  4. 安心できるおやつ時間をつくる — 流れをそろえ、感覚の過敏さに配慮し、残してもいい雰囲気を
  5. 保護者とは「プラス」の言葉で連携 — 家庭と園が同じ方向を向けば、子どもの食の経験はもっと豊かになる

保育園のおやつ時間は、子どもたちの体と心を育てるかけがえのない時間です。公的な資料を土台にしながら、園ごとの工夫で、すべての園児にとって安心で楽しいおやつ時間をつくっていきましょう。

よくある質問

保育園のおやつには、どんな栄養の考え方がありますか?

幼児は一度に食べられる量が少ないため、保育園の間食は「食事を補う小さな食事」と位置づけられています。一般に1日のエネルギーの10〜20%程度が目安とされ、厚生労働省の資料にもとづき、日本人の食事摂取基準を参考に各園で給与栄養目標量を設定します。エネルギーに加え、カルシウムや鉄など不足しやすい栄養素を補う視点が大切です。

保育園で砂糖控えめのおやつを導入するには、どうすればいいですか?

段階的に進めるのがおすすめです。まず現行メニューの砂糖使用量を書き出して見える化し、砂糖の多いメニューから、さつまいも・バナナ・かぼちゃなど素材の甘さを生かすメニューやおにぎりなどのおかず系おやつに置き換えます。子どもの反応や残食の様子を見ながら、少しずつ砂糖を減らしていきましょう。

保育園のおやつに市販品を使ってもいいですか?

市販品を使うこと自体は問題ありません。栄養成分表示で砂糖や塩分の量を確認し、アレルゲン表示(特定原材料8品目と、表示が推奨される20品目)をしっかり確認したうえで選びましょう。手作りと市販品を組み合わせ、1週間の献立の中でバランスを取る運用が現実的です。

配慮が必要な子どものおやつで気をつけることは?

感覚の過敏さから特定の食感や色を強く嫌がる子どももいるため、無理強いせず、見る・触る・においをかぐ・ひと口と段階を踏んで新しい食べ物に出会えるようにします。写真カードでその日のおやつを伝えたり、おやつ時間の流れを毎日そろえたりすると安心につながります。個別の対応は、保護者やかかりつけ医、療育機関と相談しながら進めましょう。

保育園のおやつでナッツや丸い食品は使えますか?

消費者庁は、豆やナッツ類など硬くてかみ砕く必要のある食品を5歳以下の子どもに食べさせないよう呼びかけています。ミニトマトやぶどうなど丸い食品は4等分するなど小さく切り、もちや団子などのかたさ・大きさにも注意が必要です。くるみや落花生はアレルギー表示が義務づけられた特定原材料でもあるため、園のおやつで使う場合は慎重に判断してください。

保護者に砂糖控えめのおやつをどう伝えればいいですか?

「砂糖を減らします」より「カルシウムや鉄もとれるおやつに変わります」のように、プラスの言葉で伝えるのがおすすめです。以前と新しいメニューの砂糖使用量を比較表で示したり、行事の際に試食してもらったりすると、理解が深まります。WHOのガイドラインや厚生労働省の資料など、根拠となる出典を添えると安心感にもつながります。

参考資料

本記事は、以下の公的機関の資料をもとに編集部がまとめています。

※ 本記事は一般的な情報の紹介です。各園の給与栄養目標量や個別の配慮については、園の栄養士・嘱託医、自治体の担当部署などとご相談ください。

タイプ別アドバイス

🏃 アクティブ派

外遊びが多い日や運動会の練習期間は、午後のおやつをおにぎりやふかしいもなど主食系に寄せて、エネルギー補給を意識しましょう。飲み物は麦茶を基本に、園庭から戻ったらすぐ水分補給できるよう準備しておくとスムーズです。

🎨 クリエイティブ派

月に一度、子どもたちと「食べてみたいおやつ」を絵で描いて投票する時間をつくってみましょう。人気だったアイデアを砂糖控えめにアレンジして献立に入れると、子どもたちの参加意識が高まり、残食を減らすきっかけにもなります。

😌 リラックス派

献立の全面見直しは大変です。まずは週に1回だけ、甘いおやつを主食・おかず系のおやつに置き換えるところから。調理担当者が迷わないよう、レシピは1枚に収めて掲示しておくと、早番・遅番でも無理なく回ります。