日本の食文化

しそを使ったおやつ — 爽やかな和ハーブの活用法

お刺身の横に、おにぎりの中に、そうめんの薬味に。日本の食卓には、いつもさりげなく緑の葉が添えられています。それが「しそ」です。ベランダのプランターで育てている家庭も多く、夏になると「使いきれないほど増えた!」という声もよく聞きます。ただ、子どもにとっては「なんだか草っぽい」「香りが強い」と敬遠されがちな食材でもあります。この記事では、しその香りや栄養の特徴、花粉の季節に話題になる研究の正しい読み方、そして子どもが思わず手を伸ばすしそのおやつ8品と、親子で楽しむ育て方まで紹介します。

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しそってどんなハーブ?——千年以上愛されてきた和の香り

しそ(紫蘇)はシソ科の一年草で、東アジア原産。日本では古くから栽培されてきた、もっとも身近な和ハーブです。大きく分けて、葉が緑色の青じそと、赤紫色の赤じそがあります。スーパーで「大葉(おおば)」として売られているのは青じその葉で、薬味や天ぷら、和え物など毎日の料理に使われます。赤じそは主に梅干しの色づけや、夏のしそジュースに使われます。

青じその香りは、バジルやミントにも少し似ていますが、どれとも違う独特のさわやかさ。口の中をすっきりさせてくれるので、脂ののったお刺身や揚げ物、こってりした料理によく合います。お刺身にしそが添えられてきたのも、香りで口直しをするという食べ方の知恵からです。

しその葉を乾燥させたものは「蘇葉(そよう)」と呼ばれ、漢方で使われる生薬のひとつでもあります。ただし、生薬として使われることと、料理で葉を数枚食べることは別のもの。この記事では、あくまで「食材としてのしそ」の楽しみ方を中心にお伝えします。

「紫蘇」という名前には、「紫色の葉で人が蘇(よみがえ)った」という中国の古い言い伝えがあるといわれます。カニを食べすぎて具合が悪くなった若者が、紫の葉を煎じて飲んで元気になった——という物語です。もちろん伝説ですが、しそが昔から食と体の両方に結びつけて語られてきたことがよくわかります。

しそと花粉の季節——研究で報告されていること

春が近づくと、「しそが花粉の季節によいらしい」という話を耳にすることがあります。実際のところ、研究ではどんなことがわかっているのでしょうか。

注目されている成分「ロスマリン酸」

しそには、ロスマリン酸というポリフェノールが含まれています。ロスマリン酸はシソ科のハーブに広く含まれる成分で、試験管内や動物を使った実験では、アレルギー反応に関わる物質の放出や炎症に関わる物質の産生を抑える方向に働くことが報告されています。

人を対象にした研究

季節性のアレルギー性鼻結膜炎(いわゆる花粉症の症状)のある成人を対象に、ロスマリン酸を多く含むしそ(エゴマ)抽出物を21日間とってもらった二重盲検の研究では、プラセボと比べて目や鼻の症状の一部が軽くなったと報告されています(Takano et al., 2004)。同じ研究グループは、鼻の分泌液に含まれる炎症に関わる細胞が減ったことも報告しています(Osakabe et al., 2004)。

保護者に知っておいてほしいこと

興味深い研究ですが、家庭の食卓に置きかえるときには、いくつか注意が必要です。

  • 研究で使われたのは濃縮した抽出物で、葉を数枚食べるのとは量がまったく違います
  • 対象は成人で、子どもについて同じことがいえるかはわかっていません
  • しそを食べることで花粉症が治る・予防できるわけではありません。症状がある場合は、医師の診察と治療を優先してください
  • しそやエゴマの抽出物を使ったサプリメントを子どもに使いたい場合は、必ず医師・薬剤師に相談してください

研究の話はいったん脇に置いて、香りと彩りを楽しむ食材として毎日の食卓に取り入れる——それがいちばん自然で、長続きする付き合い方です。色の濃い野菜やハーブのおやつは抗酸化物質たっぷりのおやつガイドでも紹介しています。

しその栄養——小さな葉に詰まっているもの

しそは一度に食べる量こそ少ないものの、葉物の中でも栄養が豊富な野菜です。

成分葉10gあたり(大葉10枚前後)メモ
β-カロテン当量約1,100µg野菜の中でもトップクラスの含有量
ビタミンK約69µg骨の健康を支えるビタミン
カルシウム約23mg毎日の摂取量に少しずつプラス
鉄約0.17mg葉物として見るとしっかり含まれる
エネルギー約3kcalほとんど気にしなくてよい量
ペリルアルデヒド含まれるしそ特有のさわやかな香りのもと

※ 日本食品標準成分表(八訂)「しそ 葉 生」をもとにした概算です。品種や育て方によって変わります。大葉1枚の重さは大きさによって異なります。

特にβ-カロテンは、同じ重さで比べるとにんじんを上回るほど。1回に食べる量は数枚でも、薬味やおにぎりで日常的に使えば、少しずつ積み重なっていきます。

子どもが喜ぶ、しそのおやつ8品

しその香りは、子どもが好きな食べ物と組み合わせると驚くほどなじみます。最初は「主役」ではなく「ちょっとしたアクセント」として使うのがコツです。

1. しそおにぎり

大葉2〜3枚を細かく刻み、温かいごはんに塩少々といりごまと一緒に混ぜて握ります。細かく刻むことで香りがごはん全体にやさしく広がり、しそが苦手な子でも食べやすくなります。お弁当や遠足にもぴったり。握り方や具のアイデアは子どものおにぎり完全ガイドも参考にどうぞ。

2. しそチーズ巻き

スティックチーズやクリームチーズを大葉でくるっと巻くだけ。チーズのまろやかさが、しその香りをちょうどよく包みます。ハムを1枚重ねれば、おやつにもおつまみにもなる「しそロール」に。小さな子には、ようじを使わずに巻き終わりを下にして並べると安心です。

3. ゆかりごはん

赤じその葉を塩漬けにして乾燥させ、細かくしたふりかけが「ゆかり」。きれいな赤紫色で、温かいごはんに混ぜるだけで小さなおにぎりやおやつごはんに変身します。色がかわいいので、子どもの「食べてみたい」を引き出しやすい一品です。塩分があるので、かけすぎには気をつけましょう。

4. しその天ぷら

大葉の片面に薄く衣をつけ、170℃前後の油で30秒〜1分ほど、カリッとするまで揚げます。パリパリのチップスのような食感で、生のしそが苦手な子にも人気です。揚げる作業は大人が担当し、子どもには衣をつける係をお願いしましょう。

5. しその和風パスタ

ゆでたスパゲッティを、オリーブオイル、みじん切りのにんにく少々、しょうゆ少々であえ、せん切りにした大葉をたっぷりのせます。粉チーズをふってもおいしく、ツナや鶏肉、しらすを加えればたんぱく質もとれます。しそがバジルのような役割を果たす、日本の家庭でおなじみの和風パスタです。

6. しそのみそ汁

せん切りにした大葉を、みそ汁のおわんに盛ってから加えます。煮込まずに最後にのせることで、汁の熱でふわっと香りが立ちます。いつものみそ汁が、ぐっと夏らしい一杯になります。

7. 赤じそジュース

赤じその葉をたっぷりのお湯で煮出してこし、甘味料と、酢またはクエン酸を加えます。酸を入れた瞬間、くすんだ色の液体があざやかなピンク色に変わるのが見どころ。子どもと一緒に「色が変わる実験」を楽しめます(色の変化は液体の酸性・アルカリ性によるもの)。水や炭酸水で割ってどうぞ。甘味料はアルロースを使ったり、量を控えめにしたりして、甘さを調整しましょう。

8. ゆかりポップコーン

できたてのポップコーンに、ゆかりとごま油を少量からめます。白いポップコーンに赤紫色が散って見た目も華やか。いつものおやつがぐっと和風になります。なお、ポップコーンは小さな子どもには窒息のおそれがある食品とされているので、食べさせる年齢には十分注意し、乳幼児には与えないでください。

親子でしそを育ててみよう

しそは、家庭菜園の入門にぴったりのハーブです。育てて、摘んで、すぐに食べる。そのサイクルを子どもが自分の手で体験できます。

育てる環境

日当たりのよい場所と、水はけのよい土があれば、ベランダのプランターでも元気に育ちます。暖かい気候が好きなので、種まきや苗の植えつけは気温が十分に上がる春(4〜5月ごろ)が目安。プランターは深さ・直径とも15cm以上あると安心です。土の表面が乾いたらたっぷり水をあげましょう。

種から育てるコツ

しその種は、発芽に光を必要とする性質があります。種をまいたら土をごく薄くかけるか、軽く押さえる程度にして、乾かさないように管理しましょう。芽が出るまでに1〜3週間ほどかかることもあるので、焦らず待つのがポイント。手軽に始めたいなら、春にホームセンターや園芸店に並ぶ苗を植えるのもおすすめです。

こぼれ種で翌年も

夏の終わりに花を咲かせて種をつけると、その種が自然に落ちて、翌年また芽を出すことがよくあります(こぼれ種)。一度育てると、毎年のように顔を出してくれる頼もしいハーブです。

子どもに任せたいこと

しそは成長が早く、毎日の変化が目に見えるので、子どもの水やり当番にぴったり。多少水やりを忘れても回復しやすく、摘んだ葉をそのまま料理に使えます。自分で育てた野菜は口にしてみたくなるもの。「今日のおにぎりのしそは、きみが育てたものだよ」と伝えるだけで、食卓での反応が変わるかもしれません。育てる食育のアイデアはベランダ菜園→おやつ — 育てて食べる食育もどうぞ。

日本の食文化の中のしそ——添えものだけじゃない

海外では「お刺身の横の飾り」と思われがちなしそですが、日本の食文化の中ではもっと多彩な役割を担っています。

お刺身の名脇役

お刺身にしそが添えられるのは、香りで口の中をさっぱりさせ、彩りを添えるため。しその香り成分であるペリルアルデヒドの抗菌性についても研究されていますが、しそを添えたからといって食中毒を防げるわけではありません。生ものは鮮度と温度管理がいちばん大切です。

梅干しと、ゆかり

赤じそは、梅干しづくりに欠かせない存在です。塩漬けにした梅と赤じそを一緒に漬けることで、あのきれいな赤色と香りが生まれます。漬け終わった赤じそは干して細かくし、ふりかけ(ゆかり)に。梅から赤じそ、そしてふりかけへと、余すところなく使い切る昔ながらの知恵です。梅干しやぬか漬けなど、日本の保存食の魅力は子ども向け日本の発酵食品おやつガイドでも紹介しています。

夏を知らせる香り

しそが旬を迎えるのは、6月から9月ごろ。そうめんや冷やし中華の薬味、冷ややっこ、夏野菜のサラダなど、しそが食卓に増えると「夏が来たな」と感じます。旬の食材に気づく力を育てることは、日本の食育でも大切にされている考え方です。

えごま油

しその仲間であるえごまの種からとれるのが、えごま油です。えごま油の脂肪酸の約6割は、植物性のオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸(日本食品標準成分表(八訂)より)。熱に弱いので、加熱せずにサラダやみそ汁、納豆などに少量かけて使うのがおすすめです。

しそを家族の味にするコツ

少しずつ、さりげなく

強い香りのハーブは、最初から好きになる子ばかりではありません。まずは、細かく刻んでごはんに混ぜる、ゆかりをポップコーンにかける、天ぷらにして香りをやわらげるなど、「気づくか気づかないか」くらいから始めましょう。

見て、さわって、においをかぐ

しその葉の緑や、赤じその紫はとてもきれいです。いきなり「食べてみて」と言う前に、葉を観察したり、指でこすって香りをかいだり、料理の飾りつけに使ったりするところから。見る・さわる・においをかぐという段階を踏むことで、食べることへのハードルが下がっていきます。偏食との向き合い方は偏食の子への段階的アプローチでくわしく紹介しています。

お話を添える

「これは、おばあちゃんが梅干しを漬けるときに使う葉っぱなんだよ」「このジュース、魔法みたいに色が変わるんだよ」——食べ物にお話がつくと、子どもは不思議と挑戦したくなります。

好きなものと組み合わせる

パスタ、チーズ、ポップコーン、おにぎり。すでに大好きな食べ物に、しそを少しだけ添えると、新しい味への不安がぐっと小さくなります。

いつでも手が届くところに

窓辺にしその鉢をひとつ置き、「好きなときに1枚摘んでいいよ」と任せてみましょう。自分で選んで摘んだ葉は、親にすすめられた葉よりもずっと食べてみたくなるものです。

タイプ別アドバイス

🏃 アクティブ派

汗をかいて帰ってきた夏の日は、しそと塩むすびの組み合わせが活躍します。刻んだ大葉とごまを混ぜたおにぎりなら、エネルギー補給と同時にさっぱりした香りで食欲もわきやすい。赤じそジュースは甘さを控えめに作り、水や麦茶と一緒に水分補給を。

🎨 クリエイティブ派

赤じそジュースの色変わり実験は、夏休みの自由研究にぴったり。酢、レモン汁、重曹水などを少しずつ加えて色の変化を記録してみましょう。プランターで育てたしその成長日記や、オリジナルのしそおにぎりレシピ作りもおすすめです。

😌 リラックス派

香りが苦手でも、無理に食べさせなくて大丈夫。ゆかりごはんやゆかりポップコーンなど、いつものおやつに少しだけ混ぜるところから始めましょう。窓辺のしその鉢に水をあげる係をお願いすれば、毎日少しずつ身近な存在になっていきます。

よくある質問

しそはどんな味がしますか?

さわやかで少し清涼感のある、独特の香りが特徴です。バジルやミントに似ているといわれることもありますが、それらとも違うしそならではの風味です。青じそはやさしい香り、赤じそはより香りが強めです。ごはんに混ぜる、チーズに巻くなど、子どもが好きな食べ物と組み合わせると受け入れやすくなります。

しそは花粉の季節の食材として注目されていると聞きましたが、本当ですか?

しそに含まれるロスマリン酸については、実験室での研究や、成人に濃縮した抽出物を使った研究で、アレルギー症状に関する報告があります。ただし、食事で葉を数枚食べる量は研究で使われた量よりずっと少なく、しそで花粉症が治ったり予防できたりするわけではありません。症状があるときは医師に相談し、抽出物のサプリメントを検討する場合は医師・薬剤師に相談してください。

家でしそを育てることはできますか?

できます。日当たりと水はけのよい場所なら、ベランダのプランターでも元気に育ちます。春に種をまくか、園芸店で苗を買って植えつけるのが手軽です。種は発芽に光が必要なので、土はごく薄くかけるのがコツ。花を咲かせて種をつけると、こぼれ種で翌年また芽を出すこともよくあります。

小さな子どもがしそを食べても大丈夫ですか?

しそは日本で昔から日常的に食べられてきた野菜で、給食やお弁当にもよく使われています。まずは細かく刻んで少量から試し、食べたあとに口のまわりがかゆくなるなど気になる様子がないか見守りましょう。生で食べるときは流水でよく洗ってください。ゆかりは塩分があるので使う量は控えめに。体質に心配がある場合は、かかりつけの小児科医に相談してください。

「大葉」と「しそ」は違うものですか?

同じ植物です。青じその葉を、食材として販売するときに「大葉」と呼ぶことが多く、スーパーでは「大葉」の名前で売られているのが一般的です。赤じそは梅干しを漬ける初夏の時期に、葉が束になって店頭に並びます。海外では日本食材店や韓国食材店(エゴマの葉として)、オンラインショップで手に入ることがあります。

しそを長持ちさせる保存方法は?

しそは乾燥に弱いので、軽く湿らせたキッチンペーパーで包んで保存容器や保存袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。コップに少量の水を入れて茎の先をひたし、ふんわりラップをかけて冷蔵する方法もあります。使いきれないときは、刻んで冷凍したり、しょうゆ漬けにしたりしておくと便利です。

参考文献

この記事は2026年10月時点の情報に基づいています。個別の食事アドバイスについてはかかりつけの小児科医にご相談ください。

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